W字モデルとは？V字モデルとの違いやメリット・デメリットを解説

W字モデルとは？V字モデルとの違いやメリット・デメリットを解説

W字モデルについて「よくわからない」「V字モデルとの違いがわからない」という悩みを抱えている方も多いでしょう。システム開発にあたり、どの開発手法を選ぶかは、プロジェクトの成功を左右する重要な判断です。

そこで今回は、W字モデルと他の開発手法との違い、導入によるメリット・デメリット、W字モデルが効果を発揮するケースなどについて解説します。本記事を参考に、ぜひ自社のプロジェクトにあった開発手法を選定してみてください。

W字モデルとは？

W字モデルは名前のとおり、Wの形をイメージした開発プロセスをもつシステムの開発手法です。W字モデルの基礎知識、他の代表的な開発手法との違いについて解説します。

開発工程とテスト工程を同時並行で進めるモデルプロセス

開発工程とテスト工程を同時に行う開発手法で、その流れがW字で表現できることから、W字モデルと呼ばれています。開発工程とテスト工程の対応関係は、以下のとおりです。

開発の初期段階から「どのようなテストをするか」を並行して考えるため、テストの設計漏れを検知しやすく、大幅な手戻りを防げる点が大きなポイントです。

他の開発手法との比較

W字モデルと、よく使われている以下3つの開発モデルとの違いを解説します。

＜他の開発手法＞

• V字モデル
• ウォーターフォールモデル
• アジャイル開発

他の開発手法との違いを理解すれば、適切な開発手法を選びやすくなるので、ポイントを押さえておきましょう。

V字モデルとの違い

以下の表は、V字モデルとW字モデルの違いを表しています。

V字モデルは、W字モデルのもとになっている手法です。W字モデルと同様に、開発工程とテスト工程を対応づけていることから、Vの形で表現します。手戻りが発生しにくいよう、V字モデルを改良したものがW字モデルといえます。

ウォーターフォールモデルとの違い

ウォーターフォールモデルは、上から下に水が流れるように、工程を順番に進めていく開発方法です。開発の途中で前の工程に戻るのが難しく、変更に弱いのが特徴です。一方で、W字モデルは、テスト準備を初期段階から行うことで問題に早く気づき、開発途中で何度も見直しや調整ができます。

アジャイル開発との違い

アジャイル開発は、近年人気のある開発手法で、短期間に小さいスコープで開発・リリースを繰り返す点が特徴です。開発依頼者と開発会社が頻繁に話し合いながら、柔軟に作業を進めます。

一方のW字モデルは、システムの全体設計を大切にしながらも、早期テストでリスクを減らせる手法です。変更対応の柔軟性ではアジャイル開発に劣りますが、品質を重視しつつ効率化できるのが魅力です。

W字モデルの各工程の特徴

W字モデルには、4つの代表的な工程があります。各工程でどのようなことをするのか、なぜ大切なのかを解説します。

＜W字モデルの各工程の特徴＞

• 要件定義
• 基本設計
• 詳細設計
• コーディング

それぞれを具体的に見ていきましょう。

要件定義

要件定義では、たとえば以下の内容を明確にします。

＜要件定義で明確にすること＞

• システムで達成すべき目的
• 必要な機能
• セキュリティや予算などの制約

要件定義によって、関係者全員が同じゴールを共有でき「この機能は不要だった」「これができないのは困る」などの問題が、あとから発生することを防げます。

W字モデルでは、この段階から受入テストの準備を進めるのが特徴です。決めた要件がシステムによって実現でき、システム全体を通して正しく動くかを確認します。

基本設計

基本設計では、要件定義で決めた内容をもとに、全体の仕組みを作ります。たとえば、どのような画面を用意するか、ボタンを押すとなにが起きるのかなど、システムの流れに対する設計が必要です。

W字モデルでは、この段階で結合テストの設計を始めます。結合テストでは、機能と機能を組み合わせて実行しても、正しく動作するかを確認します。

詳細設計

詳細設計は、基本設計で決めた全体の仕組みを、さらに細かく具体的にする工程です。フローチャートなどを用いてプログラムの流れを決め、使用するデータの内容や形式を検討します。詳細設計に不備があれば、あとでバグが発生しやすくなるため、注意が必要です。

W字モデルでは、この段階で単体テストの設計を始めます。正しく動作するかを機能単位で確認するテストです。

コーディング

コーディングの工程では、詳細設計にしたがって実際にプログラムを実装します。今までの設計をもとに、ものづくりを始める段階といえるでしょう。

W字モデルのメリット

W字モデルがもつ5つの代表的なメリットについて、それぞれ具体的に解説します。メリットを理解し、自社のプロジェクトの課題を解決できる開発手法かを確認しましょう。

早期にテスト準備ができる

W字モデルでは、開発初期段階からテストの設計を同時に進めるため、プログラムが完成する前からテストの準備に着手できます。プログラム完成後に急いでテストを考える必要がなくなり、スケジュールに余裕が生まれ、質の高い設計を行いやすい点は大きなメリットです。

設計の抜け漏れや矛盾が見つけやすい

W字モデルでは、各設計工程でテスト視点を取り入れるため、設計ミスや矛盾を認識しやすくなります。「この動作に違和感はないか」「想定外の操作があった場合にどうするか」といったテストの視点が入ることで、より丁寧かつ正確な開発の設計につながるのです。

手戻りのリスクを減らせる

W字モデルは、開発途中での見直しや修正がしやすく、手戻りのリスクを減らせるメリットがあります。テスト工程が並行して進むため、問題が起きたときにその場で立ち止まって確認できます。もし手戻りが発生したとしても、影響を最小限に抑えられるでしょう。

リリースまでの期間を短縮できる

開発とテストを同時に進めることで、全体の作業スピードを上げられます。とくに、テスト工程を後回しにせず、事前に計画しておくことで、余裕をもったテスト設計が可能です。W字モデルでは手戻りが発生するリスクが小さく、品質の高い設計を実現しやすいため、リリーススケジュールを押してしまう心配が減るでしょう。

担当者間のコミュニケーションが円滑になる

W字モデルでは、開発とテストが同時に行われるため、開発者とテスト担当者の間で情報共有が活発になります。ある程度大きな開発プロジェクトの場合、担当者ごとに仕事が分かれているため、情報の行き違いがトラブルの原因になります。W字モデルでは、それぞれの役割が連携するタイミングが多く、自然とコミュニケーションを行う機会が増えるのです。

W字モデルのデメリット

W字モデルを採用すれば、効率的な開発が可能になりますが、デメリットも存在します。W字モデルを採用するうえで注意すべき、2つのデメリットについて解説します。

並行作業の管理が難しくなる

W字モデルの最大の特徴は、開発とテストの工程を同時に進める点です。スピードと品質の両立を目指せる一方で、プロジェクト全体のマネジメントが難しくなる課題があります。開発工程とテスト工程のそれぞれの進捗を細かく確認しながら調整する、高度なプロジェクト管理能力が求められるのです。進捗を一覧で管理し、全体を把握しやすくするような工夫が必要です。

経験豊富なテストエンジニアの確保が必要になる

W字モデルでは、開発の初期段階からテストの計画や設計に取りかかるため、テストに関する深い知識や経験をもつテストエンジニアが必要です。まだ開発が始まっていない段階でテストの準備を進めるには、システム全体の流れをイメージする力が求められます。

経験が浅いメンバーがテスト設計を担当すると、必要なテストが漏れている場合や、設計の不備に気づけない恐れがあり、注意が必要です。

W字モデルの活用がおすすめのケース

W字モデルは、次のような場合に効果を発揮しやすいといえます。自社のプロジェクトにあてはまるかを確認しましょう。

・品質の目標が明確

W字モデルでは、開発の初期段階からテスト計画を立てるため、ミスやバグを防ぎやすくなります。

・テスト体制が整っている

W字モデルのデメリットである、経験豊富なテストエンジニアが必要という課題を解消でき、W字モデルの強みを最大限に発揮できます。

・中規模〜大規模

W字モデルは円滑なコミュニケーションを実現しやすく、複数チームの連携が必要な規模のプロジェクトでは有効です。

より高品質なシステム開発をするなら、専門家に相談を！

初めてW字モデルを導入する企業や、品質にこだわりたいプロジェクトでは、専門家に相談するのがおすすめです。

W字モデルでは、開発工程とテスト工程をリンクさせながら進める必要があり、マネジメントには高い知識やスキルが求められます。プロジェクトの規模や体制に合った形で運用しなければ、逆に手戻りやトラブルの原因となるため、注意が必要です。

W字モデルの特性をしっかり活かし、開発の現場に定着させるには、専門家の知見が大きな助けになります。品質の高いシステム開発を実現したい場合は、専門家と連携しながら、自社の開発体制をより良くしていきましょう。

まとめ

W字モデルは、開発とテストを同時進行で行うことにより、品質とスピードの両立を目指せる手法です。とくに、V字モデルとの違いや、導入時の注意点を理解したうえで活用すれば、効率的で高品質なシステム開発が実現できます。本記事を参考に、ぜひ自社に最適な開発モデルを導入してみてください。