パッケージ開発とは？スクラッチ開発との違いやメリット・デメリット、選び方を解説

パッケージ開発とは？スクラッチ開発との違いやメリット・デメリット、選び方を解説

システム開発において、開発手法は開発コストや期間、システムの品質などに影響します。システムの費用対効果を高めるためにも、手法の種類や違いへの理解は欠かせません。

そこで今回は、パッケージ開発にフォーカスして、スクラッチ開発との違いやメリット・デメリットを解説します。パッケージ開発が向いている企業やパッケージ製品の選び方も解説するので、システム開発を依頼する際はぜひ参考にしてみてください。

基本的な知識を頭に入れることで、余計なコストを削減しつつ、高品質なシステムの導入につながるでしょう。

パッケージ開発とは？

パッケージ開発の手法やスクラッチ開発との違いについて、解説します。

既存のソフトウェアやパッケージがベースの開発手法

パッケージ開発とは、各種機能が搭載済みのパッケージ製品をベースに開発を行う手法です。0から開発を始める必要がないため、開発コスト・期間を抑えてシステム・ソフトウェアを開発できます。

スクラッチ開発との違い

スクラッチ開発との違いを、項目別に見ていきましょう。

スクラッチ開発はパッケージ製品を利用せず、テンプレートやフレームワークなどを活用し、1から開発を始める手法です。自社の業務プロセスや要件に合わせやすいものの、パッケージ開発より費用と開発期間を要します。

パッケージ開発のメリット

パッケージ開発のメリットを3つ解説します。システムの開発目的、現状の優先順位にマッチした手法かを判断しましょう。

開発費用を削減できる

パッケージ開発は、パッケージ製品の機能を流用、もしくは機能追加により開発を進めるため、開発費用を削減できます。パッケージ開発の場合、必要な機能・性能をすべて開発する必要がありません。パッケージ製品に足りない機能を追加・拡張するだけで開発を進められるため、開発費用を最小限に抑えられます。

開発期間を短縮できる

パッケージ開発は、開発期間の短縮も可能です。前述のとおり、パッケージ開発は既存製品をベースに、機能追加や拡張により開発を進めます。要件定義や設計、コーディングにかかる工数が削減され、より短期間での納品に期待できるでしょう。

再現性が高く安定性がある

パッケージ開発はシステム稼働の再現性が高く、中長期的な安定した稼働に期待できます。パッケージ開発の再現性・安定性が高い理由は、以下のとおりです。

＜パッケージ開発の再現性・安定性が高い理由＞

• 新規開発されたシステムではなく、同業他社での稼働実績があるため
• ベンダーにトラブル対応のノウハウが蓄積されているため

パッケージ製品は、企業ニーズの高い機能に絞って搭載されています。そのため、同業他社での稼働実績があり、自社でも導入の成功が期待できます。また、導入事例が豊富なベンダーであれば、トラブルへの対応方法も熟知しているでしょう。パッケージ開発は再現性だけではなく、安定性にも期待できる開発手法です。

パッケージ開発のデメリット

パッケージ開発のデメリットを3つ解説します。業務プロセス・フローや業務課題に対し、許容できないリスクがないかを確認しておきましょう。

柔軟なカスタマイズが難しい

パッケージ開発は既存機能を流用するため、柔軟なカスタマイズが難しい手法です。スクラッチ開発のように自由度の高い開発手法であれば、発注側の要望に沿った機能・性能を搭載できます。

しかし、パッケージ開発はパッケージ製品に依存した開発手法なので、追加・拡張できる機能・性能に制限があります。業務プロセス・フローに完全にマッチさせるのは難しいため、カスタム要件が多い場合は、パッケージ開発が向いていないかもしれません。

業務フローをシステムに合わせる必要がある

パッケージ開発では、業務フローをシステムに合わせる必要があるため、ミスマッチの場合は使い勝手が悪くなるでしょう。前述のとおり、パッケージ開発はパッケージ製品をベースに開発するので、自社の業務フローに準じたシステムを開発できません。

導入後は、システムに合わせて業務フローを変更せざるを得ず、従業員の負担増加が懸念されます。従業員だけでなく、エンドユーザーの使い勝手が悪くなるリスクもあり、運用方法の検討も含めたシステム開発が求められます。

システムがブラックボックス化しやすい

パッケージ開発は、既存機能・性能の詳細を把握しづらく、ブラックボックス化しやすいリスクもあります。1から開発を行う場合、要件定義や設計段階からシステムの全体を把握できます。

しかし、パッケージ開発では、発注側がパッケージ製品の開発に携わっていません。追加・拡張された機能・性能しか把握できず、トラブル発生時はどこに原因があるのか、突き止められない可能性があります。

ベンダー依存の状況に陥りやすく、対応力の低下も懸念されます。パッケージ開発を始める際は、ベンダーとの連携力やサポート対応なども考慮して、開発を依頼しましょう。

パッケージ開発が向いている企業の特徴

パッケージ開発が向いている企業の特徴をご紹介します。自社の事業形態や業務課題と照らし合わせつつ、パッケージ開発を選択すべきか判断しましょう。

できるだけコストを抑えたい

パッケージ開発は、スクラッチ開発の1/5～1/10ほどのコストで開発できるため、予算を抑えたい場合はパッケージ開発を検討しましょう。基幹システムの開発を例に、パッケージ・スクラッチ開発のコスト目安を見ていきましょう。

「パッケージ開発＋カスタマイズなし」の場合、パッケージ製品の導入コスト＋月額費用だけで新規システムを利用できます。「新規事業の利益確保を優先したい」「現状での予算確保が難しい」といった場合は、パッケージ開発も選択肢に加えましょう。

独自のシステムが必要ない

独自のシステムが必要なければ、標準機能を利用できるパッケージ開発が向いています。パッケージ製品には、企業ニーズの高い機能が標準搭載されており、業務フローや事業課題にマッチしていれば、あえて機能追加・拡張を行う必要がありません。

開発期間・コストも抑えられるため、自社独自の要件がなければパッケージ開発を選びましょう。

短期間で導入を完了したい

パッケージ開発は、完成品のシステムをカスタマイズする手法なので、開発期間を短縮できます。スクラッチ開発のように、必要な機能をすべて1から開発する工数はかかりません。カスタマイズの要件が少ないほど開発期間を短縮できるので「新規事業に間に合わせたい」「早急な課題解決が必要」といった場合は、パッケージ開発が向いています。

パッケージ製品を選ぶ際の4つのポイント

パッケージ製品を選ぶ際のポイントを4つ解説します。システム導入後に「使い勝手が悪かった」「トラブルが頻発した」などのリスクに陥らないよう、選び方についても理解を深めましょう。

必要な機能が備わっているか

機能を選ぶ際は「業務プロセスやフローにフィットしているか」「事業課題が解決できるか」などの必要性を考慮しましょう。機能の充実したパッケージ製品は、利便性が高いものの、不要な機能が多ければ扱いきれません。

さらに、必要な機能が搭載されていなければ、追加のカスタマイズや別製品の追加購入など、余計なコストも発生します。パッケージ製品を選ぶ際は、事業課題や業務フローなどを洗い出し、どの機能が必要かを十分に検討しましょう。

同業他社の利用が多いか

同業他社での導入実績が豊富なパッケージ製品ほど、自社にもフィットする可能性があります。パッケージ開発は既存機能を流用する手法なので、ベースが同じパッケージ製品であれば、同業他社での成功事例が自社にも適用されるかもしれません。

ただし、業種や業務フローが異なる場合、同じパッケージ製品であっても相性が悪い恐れもあります。ベンダーの導入実績を確認する際は、自社との類似点を慎重に確認しましょう。

柔軟なカスタマイズができるか

柔軟なカスタマイズ性を備えたパッケージ製品の場合、中長期的なシステム運用も可能です。社内システムは、流動するビジネス環境に応じて動的に機能や仕様を変更させなければ、利便性を低下させる恐れがあります。

将来的なカスタムを見越したパッケージ製品であれば、数年・数十年のスパンでシステムを稼働させられるでしょう。パッケージ開発を始める際は、市場やニーズの変化も見越したカスタマイズができるかを確認してください。

サポートが充実しているか

ベンダーのサポートが充実しているほど、安定したシステム運用を実現できます。サポートが不足する場合は「稼働開始までに時間がかかる」「トラブル発生時の対処が遅れる」などのリスクがあります。

そのため、パッケージ製品を選ぶ際は、以下のサポートの有無を確認しましょう。

＜サポートの確認ポイント＞

• 日本語対応が可能か
• サポート窓口が用意されているか（メールやチャット、電話など）
• ベンダーの対応時間と自社の就業時間はマッチしているか
• パッケージ製品のマニュアルや研修などが用意されているか

上記の中でも、サポート窓口の有無は、システム稼働の安定性に直結します。ベンダーの対応力が高いほど、トラブル解決も迅速に行えるため、導入前は必ず確認しましょう。

より高品質なシステムを開発する際はスクラッチ開発もおすすめ

より高品質なシステムを求める場合は、スクラッチ開発も選択肢に加えましょう。

＜スクラッチ開発のメリット＞

• 1から開発を行うため、自社要件にフィットさせやすい
• システムのブラックボックス化を防ぎ、自社対応できる環境構築も目指せる
• 将来的な拡張性も考慮したシステムを開発できる

システムにおける品質とは、自社のニーズにフィットしつつも、中長期的に安定した稼働が目指せることです。スクラッチ開発は、自社要件に合わせて開発できるほか、ベンダー依存の状況も回避できます。

将来を見越した稼働が目指せるため、システム開発の品質を求める際はスクラッチ開発も検討しましょう。

まとめ

パッケージ開発は、既存の製品をベースに、必要な機能・性能を追加・拡張する手法です。1から開発を始めるスクラッチ開発とは異なり、開発期間やコストを削減できます。

ただし、自社要件の制限やブラックボックス化などのデメリットもあるため、システム導入の目的とマッチしているかを確認しましょう。「コスト・導入までのスピード感を重視したい」「独自性は求めない」といった場合は、パッケージ開発も検討してみてください。

自社要件にマッチしていれば、費用対効果の高いシステム導入が目指せるでしょう。