V字モデルとは？システム開発で活用するメリット、他のモデルとの違いを解説

V字モデルとは？システム開発で活用するメリット、他のモデルとの違いを解説

「V字モデル」は、システム開発で効率的なプロジェクト進行を実現できます。しかし「具体的な定義がよくわからない」「メリットやデメリットを知りたい」といった疑問をもつ方も多いでしょう。

本記事を読めば、V字モデルの理解が深まり、他社への開発業務委託時に、開発プロセスの効率化や成果の向上につながります。ぜひ最後までお読みください。

V字モデルとは？

V字モデルはシステム開発手法の1つで、後戻り作業を減らし、効率的な開発を可能にできることが特徴です。

開発工程とテスト工程を、対にしてリンクさせたモデル

V字モデルでは、開発の各工程が、その後に行われるテスト工程とペアになっています。設計時に定めた内容が開発後にしっかりと検証しやすく、ミスや不具合を早い段階で発見できる構造です。とくに、大規模なシステム開発や、小さな不具合も許されないプロジェクトで高い効果を発揮します。

V字モデルの構成要素

V字モデルは、開発の各工程がそれぞれ対応するテスト工程とリンクしています。どのようにリンクしているのか、V字モデルを構成する具体的な要素を確認しましょう。

「要件定義」と「システムテスト・受入テスト」

開発の工程である「要件定義」は、「システムテスト・受入テスト」とペアになっています。要件定義は、システムでなにを実現したいのかを明確にする作業で、システムの目的を洗い出し、実現する条件を決めます。システムテスト・受入テストは、完成したシステムが、要件定義で決めた条件を満たしているかを確認する工程です。

「基本設計」と「結合テスト」

「基本設計」は、システム全体の大まかな構造を設計する工程で、画面のレイアウトや機能の流れなどを考えます。結合テストでは、システム内の複数のパーツが正しく連携して動作するかを確認します。

「詳細設計」と「単体テスト」

「詳細設計」は、基本設計で決めた内容をさらに細かく具体化する工程です。プログラムの仕様やコードの詳細を決めます。「単体テスト」では、1つのプログラムが設計どおりに動くかを確認します。

コーディング

「コーディング」は、設計内容に基づいて、実際にプログラムを作成する工程です。コーディングは、V字モデルの中で唯一、テスト工程と直接ペアリングされていない部分ですが、設計とテストの橋渡しをする重要な工程です。正確なコーディングが、全体の完成度を大きく左右します。

V字モデルの各構成要素は、開発工程とテスト工程がしっかり結びついており、それぞれの段階で品質を確認できる仕組みといえるでしょう。

V字モデルのメリット

V字モデルには、プロジェクトを効率よく進めるためのさまざまなメリットがあります。ここでは、V字モデルの具体的なメリットを5つ紹介します。

テスト内容が明確になる

V字モデルでは、各開発工程に対応するテスト工程があらかじめ決められています。どの段階でなにをテストするのかが明確なため、テスト漏れを防ぎ、品質を高められる点は大きいメリットです。とくに、品質を重視するプロジェクトに適しているといえるでしょう。

各フェーズにおける責任者が明確になる

V字モデルでは、工程ごとに明確に責任者を設定できます。たとえば、要件定義はプロジェクトマネージャー、詳細設計はエンジニアが担当するなど、それぞれの役割分担がはっきりしています。問題が発生した場合でも、迅速に対処できる体制を実現できるのは、プロジェクト進行にあたって魅力的な点です。

作業進捗が明確になる

開発の流れが視覚的にV字型で表現されるため、進捗状況を把握しやすいメリットがあります。どの段階まで作業が進み、次になにを行うべきかが一目でわかるため、チーム全体の意識を統一しやすく、プロジェクト全体のスケジュール管理がスムーズになります。

後戻りのリスクが少なくなる

各開発工程がテスト工程と連動しているため、不具合を早期に発見できる点もメリットの1つです。たとえば、基本設計段階で問題が見つかれば、コーディングに進む前に修正が可能です。次の工程に進む前に修正できるので、スケジュールの遅延を予防できます。

修正コストを抑えられる

後戻りのリスクが減ることで、修正にかかるコストも低減します。早い段階で問題を発見・修正するほうが、完成後に修正するよりも影響範囲がせまく、手間と費用を抑えられるのです。とくに大規模プロジェクトでは、大きなメリットになります。

V字モデルと他のモデルの比較

ここでは、ウォーターフォールモデル、アジャイル開発と比較して、V字モデルの強み・課題を解説します。

ウォーターフォールモデル

ウォーターフォールモデルは、各工程を順番に進める線形的な開発モデルです。V字モデルとウォーターフォールモデルは似た構造をもっていますが、以下のような違いがあります。

ウォーターフォールモデルは、比較的シンプルで管理がしやすい一方で、品質管理やリスク軽減の面では、V字モデルの方が優れているといえるでしょう。

アジャイル開発

アジャイル開発は、小さな単位で開発とテストを繰り返し行う柔軟なモデルです。V字モデルとの主な違いは、以下の点にあります。

アジャイル開発は、スピード感や柔軟性が必要なプロジェクトに適しています。一方、品質とスケジュールを重視し、明確なテスト設計が求められる場合には、V字モデルが適しているといえるでしょう。

V字モデルの発展型である「W字モデル」について

W字モデルは、V字モデルをさらに進化させた開発手法です。V字モデルでは、開発とテストをリンクさせることで高品質なシステムを作ることを目指しますが、W字モデルではV字モデルに「品質保証プロセス」を追加します。

W字モデルのメリット

W字モデルは、V字モデルの強みを活かしながら、さらに品質保証を強化したモデルです。とくに品質を最優先に考えるプロジェクトでは、W字モデルを採用することでリスクを大幅に減らし、信頼性の高いシステムを実現することが可能です。

W字モデルが向いているケース

W字モデルは、以下のようなケースでとくに効果を発揮します。

・品質が最優先な場合

医療系や金融系など、システムの品質が生命や財産に直結するようなプロジェクトでは、品質保証を強化したW字モデルが適しています。

・大規模な開発の場合

複数のチームが関わる大規模なプロジェクトでは、品質保証プロセスが標準化されているW字モデルが最適です。

・要件が明確で変更が少ない場合

W字モデルは計画を厳密に進めることを前提としているため、途中で要件が大きく変わらないプロジェクトに適しています。

一方で、アジャイル開発のような柔軟性が求められるプロジェクトでは、W字モデルは向いていない場合もあります。プロジェクトの特性に合わせて、適切な開発モデルを選択することが重要です。

まとめ

V字モデルは、とくに高品質なシステムを効率的に開発したい場合に役立つ手法です。