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そのシステム、本当に要りますか?


システム導入プロジェクトの現場では、担当者が仕方なくプロジェクトを遂行していたり、システムを利用するユーザの顔が一切見えなかったり、システムを導入する前に改善すべき業務が多々あったりと、高いお金を払ってまでシステムを導入する必要があるのか疑問に思うことが多々あります。

システムを導入する前にやるべきことは何か、そしてプロジェクトを失敗させないために必要なことは何かについて、これから考えていきたいと思います。

なぜそのシステムを導入するのか?

私が関与してきたシステム導入プロジェクトの予算の規模は数千万円~1億円の範囲で、グループウェア(スケジュールや設備予約、ワークフローなど)、バックオフィス業務システム(社員管理、人事評価、契約・請求管理、研修管理など)、フロントオフィス業務システム(顧客・案件管理、プロジェクト管理、アサインメントなど)、マネジメントダッシュボード(経営指標サマリ、案件推移、売上予測など)といった様々なシステムを企画・設計してきました。

どのプロジェクトにおいても私が常に意識してきたのは、システムを導入する目的を明らかにすること。そんなこと言われなくてもやっているという企業に限って、目的の設定の仕方を間違えていたり、プロジェクトメンバー間で共有できていなかったりします。

どんなプロジェクトでも、目的を考え、それを明文化することは最も重要なことです。目的を設定することで、プロジェクトオーナーがプロジェクトの成功にコミットしやすくなるとともに、プロジェクトの成功確率を高めることができます。

目的というのは例えば、コストを削減する、顧客満足度を高める、稼働率を上げる、といったことです。ただし、具体的な数値を盛り込むことによって計測可能なようにしてください。

コスト削減するのであれば1千万円削減するのか5千万円削減するのか、顧客満足度は現状から何ポイント上げるのか、稼働率は70%に上げるのか80%に上げるのか、といったところまで明確にしましょう。どうしても定量化できない場合は定性的な目標を設定することもありますが、それでも予実管理はしっかり行うことが重要です。

目的を決めたら、次は手段です。

システムを導入するというのは手段の一つであり、唯一の解決策ではありません。業務のECRSで解決できないのか、ExcelやAccessなどのオフィスソフトでツール開発することによってシステム化と同じ効果を実現できないか、使えそうなクラウドサービスはないか、そういった様々な手段を検討して、目的を達成するために最適な手段を見つけ出すのが肝要です。

失敗プロジェクトの典型例は、使えないシステムを作ることと、使われないシステムを作ること。コストを削減するために無駄なコストをかける、という本末転倒なことは絶対に避けなければいけません。

失敗しないシステムづくりとは?

システム化すると決まったら、プロジェクトオーナーはプロジェクトを絶対に成功させるという強い意志をもち、プロジェクトメンバーを目的に向かって結集させる覚悟をもちましょう。業務を改善するのはコンサルタントでもITベンダーでもなく、自分なのだということを再認識してください。

使われないシステムを作らないためには、ユーザ巻き込み型でプロジェクトを推進していくとよいでしょう。そこでユーザが果たすべき役割は、どういう画面やどういう機能が欲しいかを列挙することではなく、業務における本質的な課題や問題点を明らかにすることです。画面や機能は目的を達成するための手段であり、それを考えるのはユーザの役割ではありません。

業務における課題や問題点、インパクト(影響度)が明らかになったら、目標業務プロセスの策定に取り掛かります。目標業務プロセスは、現時点で実現困難な解決策が含まれていても構いません。

素人がマラソンでいきなり42.195キロを走るのは不可能ですが、5キロ、10キロと段階的に走る距離を増やしていくことは可能です。最終的なゴールとなる目標業務プロセスを設定した上で、ゴールに向かって段階的に業務を改善していくことに意義があります。

次いで、業務へのインパクトに応じて優先順位付けをし、優先度の高い改善策から実施を検討していきます。先程も申し上げたとおり、システム化は解決策の1つ。他の手段もしっかり検討した上で、システム化の可否を決定していきます。

使えないシステムを作らないためには、業務とシステムの整合性や、ユーザーインターフェースの知見が必要となります。私の経験では、お客様が提示された画面案が正しいことはほとんどありません。それなぜかというと、次に示す3つの事項を踏まえてユーザーインターフェースを徹底的に考え抜くという作業が行われていないからだと考えます。

3つの事項というのは、システム要件と、プロジェクト制約(予算、納期、リソースなど)と、技術的実現可能性です。これらすべてをバランス良く考慮しながら、画面案を作成しては修正するということを何度も何度も繰り返して、はじめて最適な仕様を策定することができます。ここでシステム導入プロジェクトの経験が豊富な要件定義のプロがいると、仕様策定に失敗するリスクを減らすことができます。

論理的に考え抜かれた仕様というのはステークホルダーを説得する力を持っているし、洗練されていて美しいとさえ感じます。失敗しないシステムづくりを実現するためには妥協を許さず、必要なことはなりふり構わず何でもやるという姿勢が求められるのです。

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EDITOR PROFILE

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永井 雅明

日本頭脳株式会社 代表取締役。ITコーディネータ、Microsoft認定トレーナー。世界最大級のグローバルコンサルティングファームである、プライスウォーターハウスクーパース出身のたたき上げITコンサルタント。10年以上にわたり大企業向けの業務改革プロジェクトをリードし、全社的なIT化の推進や、バックオフィスの生産性向上を実現。現在は、中小企業向けに、ITを活用した生産性向上・業務効率化ソリューションを提供。また、高度IT人材育成を目的としたオフィスワーカー向けのVBA講座やビジネスセミナーなどを随時開催。

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