【オフショア開発の実際①】ICタグを使った書類管理システム

両国文化をよく知る人間を確保できるかどうかがオフショア開発の鍵

オフショア開発は、2000年問題への対応に追われた90年代終わり頃から採用され始め、現在では国内のIT企業の50％近くが導入していると言われています。その主な目的は、開発コストを削減し自社の利益を最大化することにあり、成功事例も多くありますが、その一方で、中国をはじめとするアジア諸国のオフショア開発先とのコミュニケーションの不足や商習慣の違いからくるさまざまな問題が指摘されてもいます。

弊社アイジェントの主要事業は、中国の人材を活用した日本向けオフショア開発です。そして、日本企業と中国の開発スタッフとの間に立ち、双方の調整役となっているのが、私（アイジェント代表：曲）です。私は、中国の大学を卒業し、日本のソフトウェア開発会社に就職しました。以来ずっと日本に滞在し、今年で11年目になります。日中両方のビジネスをよく知っている人間さえ両国の間に入ることができれば、オフショア開発に大きな問題は起こらないと思います。

低コストと高品質の両立、そしてスピード感の追求

また、弊社の大きな特色は、低コストと高品質を両立できることだと思います。開発の一部を中国で行うことにより、開発コストを抑えることが可能です。ただし、そのために品質を落としては何にもなりません。弊社は、打ち合わせや設計などは日本にて行い、コーディング、テストは日本基準で行うため、高品質のサービスをご提供することができます。さらに、常に「工数を最小限にする」という意識付けがあります。中国のビジネスは、クオリティと同様に、スピードを重視します。最短距離でゴールへ向かうための提案ができるところに、弊社の強みがあります。

事例①：膨大な書類データを抱える某金融機関の場合

とある金融機関より、弊社の取引先のSIer様にシステム開発の依頼が来て、弊社も協力することになりました。それは、全国の営業店から集中管理センターに送付されてくる膨大な量の書類を一元管理するためのシステムでした。センターの仕事としては、受領処理、入庫処理、出庫処理、棚卸処理などがあり、それらの処理のための労力を軽減する必要がありました。

100枚まとめて読み取れるICタグを使って効率的に一括処理

中国のスタッフとも検討した結果、書類にICタグを付け、ICタグリーダーで読み取らせる管理システムを提案することにしました。書類データにはステータスフラグが立ててあり、ICタグを使った全書類の状態管理が可能になります。リーダーから発せられる微弱な電波は、書類を透過していく性質があり、100個くらいのタグならまとめて一瞬で読み取りができ、一括処理が可能です。1枚1枚読み取らせる必要がありません。書類にはバーコードも付いており、万が一、ICタグの読み取りに不備が起きた時はバーコードを読み取るようにしていました。

書類データはデータベースで管理し、営業店側はWebシステムからの閲覧ができるようになりました。一方、集中管理センター側は、クライアントツールを使っての作業となります。処理時間は劇的に短縮され、作業の労力も大幅に軽減することができました。

厳しいチェックを乗り越えて、稼働から保守へこぎつけた喜び

この事例で勉強になったのは、お客様の非常に厳しい目によって、チェックを受けたことです。提案書や仕様書の不備は、どんなに些細なものでも追及されました。また、テスト動作であっても、不具合があることは許されませんでした。金融機関の場合、万が一にもシステムが止まってはいけませんから、その姿勢は至極当然だと思います。

提案の際に「ユニークな方法だ」と評価され、採用された時には喜びを感じましたが、それでもシステム完成後の達成感の大きさには及びませんでした。提案後も、設計から運用まで一生懸命頑張った甲斐あって、お客様からも感謝されましたし、現在このシステムが毎日稼働していることに充実感を感じます。また、このシステムの保守も弊社で担当しています。

弊社では、さまざまな規模の企業よりシステム開発のご依頼を受けています。時には、大きな企業ではなく、個人でやっていらっしゃる事務所のシステムを構築することもあります。次回は、とある会計事務所の顧客管理システムについてお話しいたします。この案件には、企業のシステム開発にはない、独特の難しさがありました。