負荷テストとは？目的・種類・実施手順とおすすめツールを解説

負荷テストとは？目的・種類・実施手順とおすすめツールを解説

Webシステムやアプリを利用するユーザーが増える場合、多くのアクセスでもシステムを耐えられるようにする必要があります。そこで、システムのパフォーマンスを事前に検証し、トラブルを未然に防ぐために重要なのが「負荷テスト」です。

負荷テストを適切に行うことで、システムのダウンや遅延を防ぎ、利用者に快適なサービスを提供できるようになるでしょう。適切な負荷テストを実施できるよう、本記事をぜひ参考にしてみてください。

負荷テストとは？

負荷テストとは、システムに対して大量のアクセスやデータ処理を行い、正常に動作するかを確認するテストです。利用者が増えるとシステムに負荷がかかり、処理が遅くなる場合や、システムがダウンして利用できなくなってしまうことがあります。負荷テストを実施することで、システムの耐久性やパフォーマンスの限界を事前に把握し、安定した運用を可能にできるのです。

たとえば、ECサイトに多くのユーザーがアクセスした場合、サーバーに過剰な負荷がかかり、ページが開かなくなることや、決済処理が正常に完了しなくなる可能性があります。このような問題を未然に防ぐため、事前に負荷テストを行い、システムの耐久性を確認しておくことが重要です。

負荷テストを実施する目的

負荷テストには、大きく分けて以下の3つの目的があります。

・システムの限界を把握する

システムがどれくらいのアクセス数や、データ処理量に耐えられるのかを測定します。事前にシステムのボトルネックを発見し、強化が必要な箇所を明確にすることが可能です。

・パフォーマンスの最適化

システムがどのような負荷状況で、パフォーマンスが低下するのかを確認できます。この結果をもとに、希望する負荷状況に耐えられるよう、改善策を講じることが可能です。

・システム障害の予防

過剰な負荷がかかった際のシステムの挙動を確認できます。障害発生時にどのような対策を取るべきかを事前に計画できるため、万が一のトラブルを最小限に抑えることが可能です。

負荷テストは、単にシステムの耐久性を測るだけでなく、最適なパフォーマンスを維持し、障害を未然に防ぐために欠かせないテストといえるでしょう。

負荷テストの主な種類と特徴

負荷テストにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる目的で実施されます。システムの安定性やパフォーマンスを正しく評価するためには、適切なテストを選択し、目的に応じた検証を行うことが重要です。

本項では、代表的な負荷テストとして、以下の5種類を解説します。

＜負荷テストの主な種類と特徴＞

• ロードテスト
• ストレステスト
• ボリュームテスト
• ロングランテスト
• スパイクテスト

それぞれを具体的に見ていきましょう。

ロードテスト

ロードテストとは、通常の利用状況と想定される負荷具合で、システムがどの程度の負荷まで安定して動作するかを調べるテストです。たとえば、1時間に1,000人のユーザーが訪問し、同時に100人が決済を行うときに、システムが正常に動作するかを確認します。システムの基本性能を把握し、本番環境でも安定した動作を実現するために、必要不可欠なテストです。

ストレステスト

ストレステストとは、システムに極端な負荷をかけ、どのように動作するかを検証するテストです。たとえば、通常は1,000人が同時にアクセスすると想定しているシステムに、1万人が一斉にアクセスした場合の影響を確認します。ストレステストを通して、システムが耐えられる最大限の負荷を知ることが可能です。また、システム障害が発生する可能性のある箇所を事前に把握し、トラブルを未然に防げます。

ボリュームテスト

ボリュームテストは、大量のデータを処理したときのシステムの動作を確認するテストです。たとえば、1,000万件のデータをデータベースに登録すると、検索速度が遅くなるのか、エラーが発生するのかといった点を調査します。ボリュームテストを行うことで、大量データを扱うシステムの課題を把握し、パフォーマンスを改善できます。

ロングランテスト

ロングランテストとは、長時間稼働させたときのシステムの安定性を確認するテストです。たとえば、24時間連続運転したときにメモリリークが発生しないか、処理速度が低下しないかなどを確認します。ロングランテストを実施することで、システムの長期安定性を保証できます。

スパイクテスト

スパイクテストとは、短時間で急激なアクセス増加が発生した場合に、システムが正常に対応できるかを確認するテストです。たとえば、システムへのアクセス数が突然10倍に増加した場合に、システムが耐えられるかを調べます。スパイクテストを行うことで、突発的なアクセス増加にも対応できるシステムを構築できます。

負荷テストの実施手順

負荷テストを実施する際は、計画的に進めることが重要です。適切な手順を踏むことで、システムのパフォーマンスを正確に評価し、問題を特定できます。本項では、負荷テストの一般的な流れについて解説します。

①テスト計画・準備

負荷テストの第一歩は、テスト計画の策定です。この段階では、以下のポイントを明確にしましょう。

＜テスト計画・準備の段階でのポイント＞

• テストの目的：どのような負荷を想定し、どのような結果を得たいのか。
• テスト対象：システム全体、特定の機能、データベースなど、どこに焦点を当てるのか。
• 負荷のシナリオ：どの程度の同時アクセス数や処理量を想定するのか。
• テストツール：負荷テストでどのツールを利用するのか。
• テストスケジュール：実施期間やテストの頻度を計画。

②テストケースの設計

前のステップで定義した内容を満たせるように、具体的なテストケースを設計します。とくに以下の点に注意しながら、テストケースを設計するようにしましょう。

＜テストケースの設計＞

• 通常時のケース：通常のユーザーアクセスに耐えられるかを確認。
• ピーク時のケース：大量のアクセスが集中した際の動作を検証。
• 異常時のケース：システムに過度な負荷をかけ、耐久性を評価。
• ユーザーシナリオに沿ったケース：実際のユーザー行動を再現するシナリオを作成。

③テスト環境の構築

負荷テストを実施するためのテスト環境を準備します。本番環境に、できるだけ近い環境を構築することが理想です。テスト環境が本番環境と大きく異なると、正確な評価ができないため注意が必要です。

④テストの実施

テスト環境が整ったら、設計・準備した内容をもとに負荷テストを実施します。いきなり大きな負荷をかけず、小規模テストから開始し、段階的に負荷を増やしていきましょう。負荷の変化によって、応答時間やエラー発生率などをリアルタイムで監視します。異常な挙動があれば、その閾値を把握しておきます。

⑤結果の分析

最後に負荷テストの結果を分析し、システムの改善点を見つけます。リクエストに対する応答が遅くなっていないか、エラー発生率が許容範囲内か、システムのリソースが消費され過ぎていないかなど、テストの合否判定を行います。分析結果をもとに関係者で話し合い、もしテストで不合格判定された内容があれば、その対応について対応の是非を決定する必要があります。

負荷テストの評価指標

負荷テストでは、システムの性能や安定性を正しく評価するために、さまざまな指標を使用します。これらの指標を分析することで、システムが想定された負荷に耐えられるか、どこに問題があるのかを特定できます。以下の4つが代表的な指標です。

＜負荷テストの評価指標＞

• 応答時間
• スループット
• CPU・メモリ使用率
• エラーレート

それぞれを具体的に見ていきましょう。

応答時間

応答時間とは、システム利用者が操作を行ってから、その応答を返すまでの時間を指します。目安として、表示系で5〜8秒、更新処理系で8〜10秒以内を負荷テストにおける合格基準として、設定する場合が多くあります。ただし、合格基準はシステムの目的や利用者にも左右されるため、一概にはいえません。

スループット

スループットとは、一定時間内にシステムが処理できるリクエスト数やデータ量を表します。スループットが高いほど、画面の読み込みや更新処理を素早く処理することが可能です。つまり、スループットが高ければ、システムの処理能力が高く、優れたパフォーマンスを発揮できるといえるでしょう。

CPU・メモリ使用率

CPUやメモリの使用率は、サーバーがどれだけ負荷を受けているかを示す重要な指標です。CPU・メモリ使用率が高くなると、処理遅延が発生しやすくなり、システムの動作が不安定になる可能性があります。

エラーレート

エラーレートは、リクエストに対してエラーが発生する割合を表す指標です。エラーレートが高いほどバグが多く、システムのパフォーマンスが低いことを示します。サーバーのリソース使用量が増加するとパフォーマンスが低下し、エラーが発生する可能性があがるため、注意が必要です。

負荷テストは専門家への依頼がおすすめ

負荷テストは、システムが大量の利用者やリクエストに耐えられるかを検証する重要な工程です。ただ、正確なテストを実施するには、専門的な知識や適切なツールが必要になります。そのため、負荷テストを実施する場合は、専門家に依頼するのがおすすめです。

専門家に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

＜専門家に依頼することによるメリット＞

• 正確なシナリオ設計：実際の利用状況を想定したテストケースを作成できる
• 高性能なテスト環境の構築：適切なツールやサーバーを用意し、実践的なテストを実施できる
• 結果の正確な分析と改善策の提案：データをもとに適切なチューニングを実施できる

適切な専門家に依頼することで、システムのパフォーマンスを最大限に引き出し、安定した運用につなげられるでしょう。

まとめ

本記事では、負荷テストの概要や種類、実施手順について解説しました。負荷テストは、システムの安定稼働に欠かせない工程です。本記事を参考に適切な負荷テストを実施し、ぜひシステムの安定稼働につなげてみてください。