生産管理システムとは？導入するメリットと注意点、後悔しない選び方

生産管理システムとは？導入するメリットと注意点、後悔しない選び方

「生産管理システム」と聞いても「具体的に何ができるのか」「導入による効果は？」など、機能・性能に関してイメージできないかもしれません。そこで今回は、生産管理システムを導入するメリットや注意点、選び方について解説します。

新規システム導入時は膨大なコストもかかるため、生産管理システムへの理解を深めつつ、導入すべきかを検討しましょう。メリット・注意点を理解することで、自社にマッチしたシステムかを判断できます。

生産管理システムとは

生産管理システムとは、製造業の業務フローを一元管理するシステムです。各業務を個別・手動管理していては、進捗の遅れやトラブル発生時に、ほかの業務にも支障をきたし、スケジュールの遅れにつながります。

生産管理システムは、業務全体を一元管理できるため、業務効率化はもちろん、スケジュール遅延のリスク回避にも効果が期待できます。次項では、生産管理システムに搭載される機能について見ていきましょう。

生産管理システムに備わっている機能

生産管理システムに備わっている機能は、次のとおりです。

＜主な機能＞

• 販売管理機能：販売にかかる業務全体を管理し、余剰在庫や受注漏れを防ぐ
• 生産計画機能：生産計画の精度を高め、必要十分なリソースで製品を製造できる
• 所要量計算機能：部品や資材の必要量・タイミングを計算し、過剰コスト・余剰資材のリスクを軽減できる
• 購買管理機能：調達業務（発注、支払いなど）を管理し、製品の販売価格や資材の数量などのバランスを調整する
• 在庫管理機能：製品だけでなく、資材や部品も含めた在庫を管理し、生産の効率化を実現する
• 製造管理機能：現場作業のプロセスを可視化し、業務効率や人的リソースの最適化を実現する
• 出荷管理機能：出荷・納品業務を管理し、納品の遅延や出荷作業ミスを軽減させる
• 原価管理機能：原価計算により、損益分岐点や採算性を計算し、営業活動の効率化を図る
• 予算管理機能：他機能との連携も図りつつ、社内全体の予算を編成し、事業プランの精度を高める

各種機能の活用で、業務効率化はもちろん、人的リソースやヒューマンエラーの回避などにもつながるでしょう。

生産管理システムを導入するメリット

生産管理システム導入のメリットを4つ解説するので、導入すべきか悩む際はぜひ参考にしてみてください。

業務の効率化に伴い品質向上・コスト削減につながる

生産管理システムは、以下の要因により、品質向上・コスト削減につながります。

＜品質向上・コスト削減の要因＞

• 現場作業の可視化により、不良品発生のプロセスを特定できる
• 需要と生産のバランス調整によって、余剰在庫による管理コスト、在庫不足が原因の機会損失を軽減できる
• 製造業務全体のプロセスを統合管理することで、人的リソースが最適化される

生産管理システムは、製造業務全体を可視化し、在庫・人員の最適化を図ります。業務効率化はもちろん、ヒューマンエラーの回避や、在庫が原因によるコスト増加も防ぎやすくなるでしょう。

受注から納品までの期間（リードタイム）の短縮

生産管理システムは、業務プロセス全体の管理により、受注から納品までの期間短縮にも効果が期待されます。システムによる管理は、部品・資材の仕入れはもちろん、製品の需要や納品・出荷管理まで業務全体におよびます。

すべての業務が可視化されるため、必要な人員や資材、需要予測をもとにした生産量まで、把握できるでしょう。遅延の原因となる問題箇所の発見にもつながり、納品までの期間短縮に効果が期待できます。

データの情報共有・分析が容易

各業務におけるデータの情報共有・分析が円滑化されることで、業務課題や環境改善にもつながります。生産管理システムは、各業務の状況を数値化し、データとして管理することで、可視化・一元管理できるシステムです。

データの分析によって、遅延や品質低下の原因発見も容易になり、課題・問題点の早期発見につながるでしょう。

属人化などのヒューマンエラー解消

生産管理システムは、従業員に依存する業務体系を解消し、ヒューマンエラーの回避にもつながります。製造業務では、職歴の長い従業員の知識・スキルに依存する、いわゆる属人化が加速するケースも少なくありません。従業員への依存は、手作業によるミスや作業遅延など、ヒューマンエラーにもつながります。

生産管理システムは、各業務をデータ化し、情報共有を加速できるシステムです。知識・スキルの継承も可能なため、属人化の解消につながります。

さらに、手作業で行っていた管理業務の自動化・効率化によって、従業員依存が原因のヒューマンエラー解消にも効果が期待できるでしょう。

生産管理システムを導入する際の注意点

生産管理システム導入時は、次項で解説する4つの注意点も頭に入れつつ、自社にマッチしたシステムかを検討しましょう。

初期費用・ランニングコストがかかる

生産管理システムは、数百～数千万円規模の導入コストがかかります。たとえば、業務全般に必要な機能を搭載したパッケージ型システムの場合、導入コストは100～1,000万円が目安です。

さらに、システムの開発～運用を外注した場合、もしくはクラウド型を利用する場合、ランニングコスト（運用費や月額料金）もかかります。システムの利用方法や導入目的などを明確にしたうえで、費用対効果も考慮しつつ、導入を検討しましょう。

慣れるまで現場の負担になる可能性がある

生産管理システムを利用するのは従業員なので、慣れるまでは現場の負担が増えてしまう恐れもあります。とくに、操作方法や管理画面が既存のシステムとは異なる場合、理解するまでに時間がかかるでしょう。

従業員の理解が深まるよう、事前にシステムの必要性や操作方法のマニュアルなどを、共有する必要があります。

システム上の数字と実際の在庫数の乖離に注意する

生産管理システムで管理されるデータは、あくまでも理論在庫なので、実際の在庫数と乖離するケースもあります。理論在庫とは、入出庫データをもとに、システム上で算出される在庫数です。

在庫数の乖離は、資材や部品の不足、製品の欠品などにつながります。各種伝票（入庫伝票や売上報告書など）をもとに、理論在庫と実際の在庫の乖離が発生しないよう、定期的な確認が必要です。

自社の業種及び規模に合ったシステムを選ぶ必要がある

費用対効果を最大化させるため、生産管理システム導入時は、自社の業種・企業規模に見合っているかを確認する必要があります。生産管理システムは、製品によって適合する生産方式が異なります。

たとえば、製品の個別受注を軸とした企業の場合、大量生産向けのシステムを導入しても、試作品や資材・部品データを管理しきれないかもしれません。導入目的や改善したい課題などを明確化し、必要十分な機能・性能が搭載されているかを確認しましょう。

生産管理システムを選ぶ際のポイント

生産管理システムを選ぶポイントを4つ解説します。

生産形態とシステムの管理方式が噛み合っているか

生産形態とシステムの管理方式がマッチすることで、必要十分な機能を搭載した生産管理システムを導入できます。たとえば、生産形態が個別受注の場合、製番管理（部品や製品を番号で管理）に対応したシステムのほうが、製品単位で業務全体を管理できます。

事前にベンダーの窓口や資料請求などで、システムが対応する業務範囲・得意な領域を確認しましょう。

自社の企業規模に合ったシステム数と価格帯か

企業規模（予算）に合わせ、システムの導入を検討しなければ、費用対効果の最大化は図れません。生産管理システムは提供形態によって価格が異なるため、まずは形態別の価格帯を把握しましょう。

十分な予算を確保できない場合、クラウド型・パッケージ型を検討しましょう。ベンダーによっては、クラウド型でも機能をカスタマイズできるケースもあります。

自社の業態に合ったカスタマイズ性はあるか

柔軟なカスタマイズ性を備えたシステムであれば、導入コストを抑えつつ、課題解決や将来的な事業拡大にも対応できます。充実した機能を搭載するシステムは、対応業務の幅が広いものの、膨大な導入コストがかかります。

一方、カスタマイズ性に優れたシステムは、機能の取捨選択が可能で、業態に応じた機能を搭載可能です。課題解決や事業拡大に合わせてカスタマイズできれば、コストを抑えつつ、自社にマッチするシステムを導入できるでしょう。

システムのサポートが充実しているか

ベンダーのサポート体制が充実している場合、トラブル発生のリスクを抑えた、スムーズな運用を実現できるでしょう。新規システム導入時は、操作方法や機能の活用方法に苦戦し、期待する効果が実感できないかもしれません。

このような場合、電話窓口や訪問対応などのサポートがあれば、導入効果を実感しつつ、社内の負担も抑えて運用しやすくなります。サポート体制はベンダーによって異なるため、導入前に必ず確認しましょう。

まとめ

生産管理システムは、製造業における業務全体を一元管理できるシステムです。業務効率化はもちろん、属人化やヒューマンエラーの回避などにも効果が期待できます。

ただし、導入・運用時は膨大なコストがかかるため、自社の業態・規模に合わせたシステムを検討してください。後悔なく導入するには「自社が抱える課題・問題点を解決できるか」「将来的な事業展開にも対応できるか」など、具体的なイメージを持つことが重要です。