システムの可用性とは？意味や信頼性との違い、向上させる方法を解説

システムの可用性とは？意味や信頼性との違い、向上させる方法を解説

システム障害による業務停止やサービスのダウンは、企業にとって大きなリスクとなります。しかし「可用性とはそもそもなに？」「信頼性や耐障害性との違いがわからない」「可用性を向上させる方法を知りたい」といった悩みを抱えている方は多いでしょう。

本記事では、可用性の基本概念から信頼性との違い、可用性を向上させるための具体的な方法まで、わかりやすく解説します。本記事を読めば、可用性の重要性を理解でき、他社への業務委託時にも、システムの安定稼働に向けて自信をもって依頼できるでしょう。

可用性とは？

ITシステムでは、どれだけ長い時間、問題なく利用できるかが重要なポイントになります。可用性が高いシステムほど障害が発生しにくく、仮にトラブルが発生してもすぐに復旧することが可能です。

ここでは、可用性の具体的な意味や関連する用語について、詳しく説明します。

可用性はシステムが停止せずに継続して稼働できる能力

可用性とは、システムが停止せずに継続して稼働できる能力のことを指し、割合（%）で表されます。つまり、必要なときにシステムが正常に動いているかどうかが、可用性の指標です。たとえば、可用性が99.9%の場合、年間で8.76時間の停止時間があるものの、それ以外の時間は稼働しているという意味になります。

信頼性や耐障害性との違い

可用性とよく混同される用語に「信頼性」や「耐障害性」があります。それぞれの違いを明確に理解しておくことで、より適切な対策を講じられます。

可用性が高いシステムは、稼働時間の割合が高いシステムのため、障害が発生してもすぐに復旧し、利用者が影響を受けにくい仕組みです。

信頼性は、システムがどれだけ長い時間連続して稼働するかを指し、時間で表されます。たとえば、信頼性が20時間の場合、システムが20時間稼働した後に停止したという意味です。信頼性の高いシステムは、そもそも障害が発生しにくい設計になっているといえるでしょう。

耐障害性は、障害が発生しても影響を最小限に抑える能力のことです。耐障害性を備えたシステムでは、仮に一部が故障しても、システム全体が動き続けるようになっています。

これらの概念は互いに関連しながら、異なる側面からシステムの安定稼働を支えています。可用性を高めるためには、信頼性や耐障害性の要素もバランスよく考慮することが重要です。

情報セキュリティの3要素（機密性、完全性、可用性）について

情報セキュリティには「機密性」「完全性」「可用性」の3つの要素があり、それぞれの英語の頭文字から「CIA」と呼ばれます。

＜情報セキュリティの3要素＞

• 機密性（Confidentiality）：許可された人のみが情報にアクセスできる状態。
• 完全性（Integrity）：データが改ざんされず、正しい状態が維持される状態。
• 可用性（Availability）：必要なときにシステムやデータが利用可能である状態。

機密性・完全性・可用性がバランスよく守られていることで、システムの安全性が確保されます。

可用性が低いとどうなる？

可用性が低いと、システムが頻繁に停止したり、必要なときに使えなかったりする状態になります。ビジネスの機会損失や顧客の信頼低下につながるだけでなく、経済的な損失や業務の混乱を引き起こす可能性があり、注意が必要です。

たとえば、ECサイトがセール期間中にアクセスできなくなった場合、顧客は商品を購入できず、企業は売上を逃してしまいます。また、金融機関のシステムがダウンすると、ATMが利用できなくなり、多くの人々が影響を受けます。このように、可用性の低さは企業やユーザーに大きな影響を与えるため、適切な対策を講じることが重要です。

また、自社で使用する業務システムにおいても、SaaSサービスや、クラウドサービスを使用する場合は、この可用性をしっかり確認し、サービスとして安定的に稼働しているものを選ぶようにしましょう。もし、選び方に不安がある場合は、システム開発会社やITベンダーなど専門家に相談して知見を借りると安心です。

可用性を高めるための具体的な方

可用性を向上させるためには、システムの構造を見直し、障害が発生しても影響を最小限に抑える工夫が必要です。高可用性を維持することで、業務の安定化や顧客満足度の向上につながります。以下では、具体的な改善策について詳しく解説します。

システムを置き換える

現在使用しているシステムが古く、障害が発生しやすい場合、新しいシステムへ移行する方法が有効です。最新の技術を活用することで、可用性の向上が期待できます。最新のハードウェアやソフトウェアへアップグレードすれば動作が安定し、障害の発生を減らせる場合があります。

ハードウェアの冗長化を実施する

冗長化とは、システムの構成要素を二重化し、万が一の障害時にも、すぐ代替機能が動作するようにすることです。システムの停止を防ぎ、高い可用性を維持できます。

<h4>「アクティブ・スタンバイ構成」と「アクティブ・アクティブ構成」</h4>

冗長化の方法には、大きく分けて「アクティブ・スタンバイ構成」と「アクティブ・アクティブ構成」の2種類があります。それぞれの特性を紹介します。

「オンプレミス型」と「クラウド型」

可用性を高める方法として、システムのサーバーをオンプレミス型からクラウド型に移行することも有効です。オンプレミス型とクラウド型のそれぞれの特性を紹介します。

最近では、多くの企業がクラウド型へ移行し、高い可用性を実現しています。とくにアクセスが集中するサイトでは、クラウド型の柔軟性を活かして負荷分散を行い、安定したサービスにつなげている点はポイントです。

緊急時に備えたデータ管理を行う

システムがダウンした際にデータが失われると、業務に深刻な影響を及ぼします。そのため、データのバックアップや復旧対策をしっかりと行うことが重要です。たとえば、クラウドストレージサービスを活用すれば、自動でデータをバックアップし、緊急時に迅速な復旧ができる可能性があります。

運用・保守の体制を見直す

システムの可用性を維持するには、適切な運用・保守が欠かせません。運用・保守の体制を見直す際の具体的な例を紹介します。

＜運用・保守の体制を見直す際の具体的な例＞

• 監視システムの導入：リアルタイムでシステムの状態を監視し、異常を早期に検知する。
• 障害発生時の対応マニュアル作成：障害が発生した際に迅速に対応できるよう、手順を明確にする。
• 定期的なシステムメンテナンス：古いハードウェアやソフトウェアの更新を行い、安定した運用を確保する。
• 運用チームの教育：担当者のスキル向上を図り、障害対応能力を高める。

とくに大規模なシステムでは、障害の発生を最小限に抑えるための運用ルールを確立することが重要です。運用・保守の体制を整えることで、障害発生時の影響を最小限に抑えられます。

まとめ

システムが安定して稼働し続けることは、ビジネスの継続性やユーザーの利便性に直結します。そのため、可用性は、システムを設計・運用するうえで欠かせないポイントです。本記事を参考に適切な対策を講じて、高可用性のシステムを構築しましょう。