シナリオテストとは？実施するメリットや注意点、実施手順を解説

シナリオテストとは？実施するメリットや注意点、実施手順を解説

シナリオテストについて「シナリオテストの具体的な進め方がわからない」「他のテストとどう違うのか知りたい」「どうしたら効率的に進められるのか知りたい」と悩んでいる方も多いでしょう。

本記事では、シナリオテストの具体的な作成・実施手順や他のテストとの違い、効率的に実施するためのポイントまで詳しく解説します。シナリオテストの進め方を理解することにより、他社への業務依頼時にも、品質向上やテスト効率の改善につなげられます。

シナリオテストとは？

シナリオテストとは、システムが実際の利用者の操作に対して、正しく動作するかを確認するテスト手法です。具体的に、シナリオテストの目的や他のテストとの違いについて確認していきましょう。

シナリオに則った操作で、システムが正常に動作するかを確認するテスト

シナリオテストでは、システム利用者が実際にシステムをどのように操作するのかを想定し、その流れに沿ってテストを行います。単なる機能チェックではなく、一連の流れの中で問題が発生しないかを重点的に確認するテストです。不具合だけではなく、ユーザー体験を損なうような状態や使い勝手の悪さも発見できる点が特徴です。

シナリオテストを行う目的

シナリオテストの目的は、利用者視点でシステムの動作を確認し、満足度の高い品質を保証することです。単に要件通りの機能を備えていても、操作性の不便さやUI/UXの問題があっては、利用者が満足しないかもしれません。シナリオテストを実施することで、満足度を低下させる可能性のある問題を検出し、改善へとつなげられます。

シナリオテストと他のテストとの違い

シナリオテストと他のテスト手法（単体テストや結合テスト）には、それぞれ異なる目的と特徴があります。以下の表で比較しましょう。

シナリオテストのメリット

シナリオテストは、利用者目線でテストをできる点で、他のテスト手法にはない多くのメリットがあるテストです。本項では、シナリオテストの具体的なメリットを3つ紹介します。

実際の操作感を反映しやすい

シナリオテストのメリットの1つが、実際のシステム利用者が行う操作をそのままテストに取り入れられる点です。実際の操作フローをもとに検証できるため、利用者が操作しにくい部分を把握でき、UI/UXの改善に役立てられます。その結果、ユーザビリティの向上にもつながります。

また、利用者の行動を基準にしてテストするため、開発者が想定していなかった不具合を発見しやすくなる点も重要なポイントです。

仕様上の不備や不整合を発見しやすい

シナリオテストを実施することで、仕様の抜け漏れや不整合を見つけやすくなります。シナリオテストでは、あらゆる利用者を想定してテストを実施するため、多様なテスト結果が集められます。その結果、システム全体の動作を確認しやすく、システムの仕様自体の問題に気づきやすい点は大きなメリットです。

複数の画面・システムを一連でチェックできる

シナリオテストでは、異なる画面やシステムをまたいでテストを実施できるため、複雑な動作の確認に適しています。たとえば、申請機能をもっている業務システムでは、申請者が申請するという機能のテストだけではなく、申請後に上司が承認した後はどうなるかというケースをテストに含めます。

シナリオテストでは、1つの機能ではなく、システム全体の流れを確認できる点が大きな特徴です。

シナリオテストのデメリット

シナリオテストには多くのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。本項では、シナリオテストの代表的なデメリットについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

網羅的に行うには膨大な工数がかかる

シナリオテストは、実際の利用者の操作手順を再現して行うため、細かく設計しようとすると多くの時間と労力が必要になります。

また、シナリオテストは一連の操作を順番に実施することから、単体テストのように部分的なチェックだけでは済みません。テストの設計だけではなく、実施自体にも時間がかかり、テスターの負担が大きくなります。

定義されたシナリオ以外の問題を発見しにくい

シナリオテストは、事前に決められた操作手順に従って実施するため、想定外の使い方や異常な動作を発見しにくいというデメリットがあります。たとえば、利用者の誤操作など、意図せず誤った操作をした際の動作確認は困難です。

シナリオテストの実施手順

シナリオテストを効果的に実施するためには、事前準備と計画が重要です。テストの目的を明確にし、具体的なシナリオを設計することで、より実用的な結果を得られます。シナリオテストの実施手順を紹介するので、効果的なシナリオテストの参考にしてみてください。

①アクターの洗い出し

シナリオテストでは、アクターを特定することが重要です。アクターとは、システムと関わるすべての関係者を指し、人以外に外部システムも含まれます。

具体的なアクターの例は、以下のとおりです。

＜アクターの例＞

• 一般ユーザー（購入者、閲覧者）
• 管理者（システム管理者、販売者）
• 外部システム（API連携、決済サービス）

②目的の設定

次に、シナリオテストの目的を設定しましょう。目的が明確でないとシナリオが不明瞭になり、効果的なテストが難しくなります。シナリオテストの目的は、以下のようなものがあります。

＜シナリオテストの目的＞

• 利用者がスムーズに操作できるか確認する
• エラーが発生せず、正しい動作をするか検証する
• 業務フローに沿った処理が適切に行われるか検証する

③シナリオの設計

シナリオとは、アクターがシステムをどのように操作するかの流れです。シナリオを設計する際は、以下の要素を含めると、誰が見てもわかりやすくなり、テスターの負担を減らせます。

④確認項目や期待値の設定

シナリオごとに、なにをチェックすべきかを明確にするために、確認項目や期待される動作（期待値）を設定します。確認項目や期待値を明確に定義することは、各テスターの解釈によってテスト結果が変わってしまう事態を予防できるため、重要なポイントです。

⑤シナリオの実装

設計したシナリオを実際のテストケースに落とし込みます。具体的にテストデータを準備し、テスト環境を整えることが必要です。その際、実際の利用者に近いテストデータを用意することで、実際の環境に近いテストが行えます。

⑥テストの実行

シナリオに沿ってテストを実行し、システムの動作を確認します。手動テストと自動テストのどちらを採用するかも、検討しましょう。

手動テストは、テスターが実際に操作しながら確認するため、UI/UXなどユーザビリティを確認したい場合や、複雑なシナリオには効果的です。自動テストは、スクリプトなどを用いて自動的にテストを実行する方法で、繰り返し行う自動テストを採用することで工数を削減できます。

⑦テストの評価

最後に、実施したテストの結果を評価します。テスト結果が期待値と一致しているかを確認し、問題があれば改善策や修正を検討することが必要です。テスト結果は破棄せずドキュメント化しておけば、今後の改善や追加テストに役立ちます。

シナリオテストを効率化する方法

シナリオテストは、テスト範囲が広くなると膨大な時間と労力がかかります。そこで、シナリオテストを効率化する方法を活用し、負担を減らしつつ、精度の高いテストを実施することが重要です。

テストの優先度を決める

重要度や影響度の高いシナリオを優先的にテストすれば、限られた時間の中でも効果的なテストが実施できます。優先度を決める項目の例をいくつか紹介するので、参考にしてみてください。

＜優先度を決める項目＞

• 高頻度で利用される機能
• 障害が発生すると影響が大きい部分
• 過去に不具合が発生した機能

シナリオの粒度を適切に設定する

シナリオの粒度（詳細レベル）を適切に設定することで、テストの実施効率を向上させられます。シナリオの粒度が細かすぎれば、テストケースが増えすぎて非効率になってしまいます。一方で、粒度が大まかすぎる場合、具体的な問題を見逃しやすく、注意が必要です。

多様なユーザー視点を考慮する

シナリオテストでは、あらゆる利用者の操作を想定して不具合を発見する必要があるため、異なる利用者の視点を考慮することが重要です。開発者だけの視点ではなく、実際に使うユーザーの視点でテストを設計すると、より実用的なテストが可能になります。

テンプレートを活用する

シナリオを毎回ゼロから作成するのは、非効率です。共通するテスト項目をテンプレート化することで、作業時間を短縮し、抜け漏れを防ぐ効果があります。テンプレートを活用すれば、テストケースの作成スピードが向上し、品質も安定するでしょう。

自動化ツールを活用する

シナリオテストを手動で行うと時間と手間がかかるため、可能な部分は自動化するのが効果的です。繰り返し実施するテストは、自動化することで工数を大幅に削減できます。手動と自動のバランスを考えながら活用することにより、シナリオテストを効率的に実施することが可能です。

まとめ

シナリオテストは、システムが実際の使用環境で正しく動作するかを確認する重要な手法です。効率的なテストを行うことで、品質向上と開発コストの最適化が可能になります。本記事を参考に、ぜひ高品質なシステム開発を実現してみてください。