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パッケージデザインの役割〜商品ブランディング考〜②競合に勝つパッケージデザイン開発のために

tcdでは前回記事に書いたような百貨店ブランドのストア・ブランディング以外に、スーパーやドラッグストアなどで並ぶ日用品や食品、化粧品や医薬品などさまざまな商品のパッケージデザインも数多く手がけています。これらの商品が置かれている売り場は、百貨店とは異なり、すぐ隣にライバル商品が多数ひしめき合って並ぶ、商品にとっては非常に厳しい環境といえます。
これらのパッケージデザイン開発において目標とするのは、短い時間で消費者の目に留まり、特徴を理解され、そして手に取ってもらえる事です。これらはパッケージデザインを短期的にみた重要な役割です。デザインの「瞬発性」と言ってもいいかも知れません。一方、中長期的な役割としては、デザインが消費者の心に残りブランドや商品の象徴的な存在として「資産」になるということです。これは「持久性」と言えるでしょう。デザイン開発に当たっては、この2つの観点を念頭に置きながら進めていく必要があります。
 
では、どうすれば期待した成果が得られるデザインを作ることができるのでしょうか?
tcdでこういったパッケージのデザイン開発を行う際には、まず競合となる商品のデザインや売り場の状況などを調査した上で、いくつかのポイントをふまえながらデザインを検討していきます。そのポイントは大きくまとめると5項目あります。
 
 
パッケージデザイン開発の5つのポイント
 
1)記憶に残りやすいか
 
あるブランドや商品を思い出すときに、イメージとして浮かぶ形や色、モチーフなどがあると思いますが、これらはパッケージデザインの印象から来たものが多いと思います。例えば、コーラの赤色やマヨネーズの格子模様、ラッパのマークやコアラのキャラクターなど。これらは大変重要なデザイン的資産と言えます。デザイン的資産とは、消費者の頭の中で他の商品との違いを「認知」し、特徴として「記憶」され、後で「想起」する助けとなるデザイン要素であり、特に、新商品のパッケージデザインを考える上では、今までにない新しい商品として認識してもらう為にも、個性的で新規性のあるデザイン要素の開発が必要です。主立った要素としては、商品(ブランド)ロゴ、シンボルマーク、色彩、イラストや写真などのビジュアル、グラフィックパターンや模様、箱や容器のフォルムなどが当てはまります。 
 
 
2)わかりやすく「USP」が表現されているか
 
「USP」とはUnique Selling Propositionの略で、他社にはないその商品の独自性(強み)のことです。まず商品自体にこれがなければ消費者に選ばれるいう事は非常に難しいでしょう。
この「USP」をパッケージ上で訴求することが消費者の購入行動の動機づけとなります。ただし、売り手側が伝えたい事が沢山あったとしても消費者はそのすべてを求めていない事も多く、あまり色々と詰め込みすぎると結果的に特徴がぼやけてしまい、結局何が言いたいのかが伝わらなくなります。ここで重要なのは、一番に伝えたい事は何かを明確にし、それらを簡潔且つ魅力的なメッセージ(ネーミングやキャッチコピー)にする事です。そして、そのメッセージにあった適切な書体、文字の大きさ、カラーリングを選定しデザインする事です。下の図を見てみてください。同じ文字情報でもあしらいが変わるとずいぶんと印象が違って見えるのがお分かりいただけるでしょう。
 
 
3)企業の顔になっているか
 
たとえば、ある化粧品メーカーが新たに食品を開発したとします。消費者はこの食品に対して、何かしら「美しくなる効果」を期待するでしょう。これは、企業がこれまで行ってきた活動によって、消費者の頭の中に作り上げられた企業に対するイメージがあるからです。このイメージを上手に活用することで商品に優位性を与える事ができます。有名なブランドを持っていなくても、企業の歴史や理念などがその商品と結びつき、ひとつのストーリーとして消費者に認識される事で商品の説得力はグンと高くなります。逆に言えば、カテゴリーにおけるトップブランドと同じような手法で勝負するということは非常に難しいという事です。その企業またはブランドが置かれている状況を見据えながらアプローチを考えるべきでしょう。
また消費者にとっては、製品やパッケージはその企業との接点として一番身近な存在です。パッケージから受ける印象はその企業のイメージそのもの、企業の顔のようなものです。その企業に相応しいデザインか、コンプライアンス上問題ないかなどをしっかり検証しておく必要があります。
 
 
ここまでの1)〜3)はその商品やブランドの個性を伝える「自称的」ポイントで、「私はこういうものです」といった主張のようなもの、といえます。「私はこういうものです」がひとまず構築できたなら、次の2つ「他称的」ポイントでデザインを見つめてみましょう。
 
 
4)ターゲットに共感されるか
 
その商品がターゲットととする消費者層によって、デザインに必要なトーン&マナーは違ってきます。ターゲットに共感される為には、デザインによって興味を持ってもらい「私の買う商品である」と認識をしてもらわなくてはいけません。若年層に向けた商品や趣味性の高い商品ではそれぞれの趣向に合った「世界観」の表現が必要となります。本屋に行くと女性向けのファション誌が数多くありますが、仕事を抜きにして全てを購入している人はほとんどいないでしょう。違う世代から見ればどれも同じように見えることもあるこれらの雑誌は、それぞれ異なるターゲットが想定されています。それだけでも「20〜30歳代女性向け」という世界の幅の広さが分かります。
また、価格納得性も重要です。例えばプレミアム商品と一般的価値の商品では、消費者の購買心理は違います。デザインに求められる上質感や高級感などの基準も変わってきます。
 
 
5)「カテゴリー・フィット」しているか
 
「カテゴリー・フィット」とは簡単に言えば、その「商品らしさ」を考慮するという事です。消費者にはこれまで目にしてきた様々な商品のデザインによって、「このような商品はこのようなデザイン」というイメージが存在します。例えば、牛乳のパッケージは青と白いイメージと紙パックであることで中身の味が想像できます。これが黒や茶になればコーヒーです。ミネラルウォーターは青い色のデザインで透明のペットボトルですが、グリーンになれば緑茶のイメージになります。消費者はまず第一印象で自分が探しているものかどうかを瞬時に判断します。新しい商品なのでインパクトを持たせようと敢えてイメージから大きく離れたデザインをする事もありますが、そういったデザインは短期的には注目を集める事があったとしても長く親しまれるものにはなりにくい傾向があります。カテゴリー内の王道イメージにフィットしつつ新しさを感じさせる工夫をすることが重要でしょう。私たちはこれを「同質の中の異質なデザイン」と言います。
 
4)〜5)は客観的なイメージを考慮した「他称的」項目で、「あなたはこういう人に見えます」という人から見たイメージのようなもの、といえます。
 
以上の5項目はいずれも重要なポイントであり合わせて検討していく事が基本ですが、テーマの状況によってはこれらに優先順位をつけたり敢えて外す事もあります。個性の主張は必要ですが消費者の感覚を無視したデザインでは伝わるものも伝わりません。この「自称」と「他称」がうまくバランスが取れていると消費者の心に届くデザインになるのではないでしょうか。

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