「業務プロセス」とは？フローとの違いと改善を図るのに必要なポイント

「業務プロセス」とは？フローとの違いと改善を図るのに必要なポイント

生産性の低下や人件費の増加といった課題は、業務プロセスの改善で解消できる可能性があります。ただし、改善に取り組む際に業務プロセスへの理解を深めなければ、期待する成果は得られません。

そこで今回は、業務プロセスとは何を指すのか、改善に必要なポイントも含めて解説します。業務プロセス改善の流れや注意点も解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

業務プロセス改善への理解を深めることで、顧客満足度の向上や労働環境の改善など、副次的な効果も期待できるでしょう。

業務プロセスとは

業務プロセスとは、企業内の業務全体における一連の流れです。たとえば、受注・仕入れ・製造・販売などの各業務は、部門・部署ごとに異なる業務を遂行します。しかし、すべての業務は連携しており、業務プロセスはこれら全体の流れを示す用語です。

次項では、業務フローとの違いや、業務プロセス改善のメリットについて見ていきましょう。

業務フローと業務プロセスの違い

業務フローと業務プロセスについて、それぞれの特徴から違いを解説します。

業務フローは、業務プロセスを構成する一つの要素であり、各業務の流れを図式化できます。業務課題の改善にあたっては、まず業務フローを作成し、業務プロセスの把握に努めなければなりません。

また、似た用語にBPR（ビジネス・プロセス・リエンジニアリング）がありますが、こちらは業務プロセスの抜本的改善を意味します。業務課題の改善に向けたプロセスの再構築を目指す手法であり、業務フロー・プロセスとは意味が異なります。

「業務プロセスの改善」がもたらすメリット

業務プロセスの改善がもたらすメリットは、次のとおりです。

＜業務プロセス改善のメリット＞

• 人材配置の最適化によるコスト削減
• デジタル化による業務効率の最適化
• 業務の標準化や品質向上によるリスクマネジメント

業務プロセスの改善とは、業務上の無駄・リスクを発見して最適化することです。たとえば、業務マニュアルを整備していない場合、各従業員が独自の方法で業務を遂行する恐れがあります。

業務によっては、特定の従業員しか習得していないスキル・ノウハウが生まれるかもしれません。こうしたケースは、業務の属人化だけでなく、業務品質のバラつきにもつながります。

リスクマネジメントのためにも、業務プロセス改善を検討しましょう。

業務プロセスを改善するための流れ

業務プロセス改善の流れを5つの工程に分けて、解説します。

①業務全体を図で可視化しプロセスとフローで分ける

まずは、業務全体の工程を業務フローに分け、業務プロセスへと可視化してみましょう。

以下では製造業を例に、業務プロセスを可視化してみます。

業務フロー作成時は、各現場で「誰が・何をしているか」を書き出します。作業手順や内容、パターン化された作業なども書き出し、具体的な業務プロセスへと昇華させましょう。

業務プロセスの作成により、各現場・工程における課題発見へとつながります。

②課題（ボトルネックになっている部分）を洗い出し改善策の仮案を立てる

次は業務プロセスをもとに、課題の洗い出しと改善策の仮案を立てましょう。課題を洗い出すポイントは、次のとおりです。

＜課題を洗い出すポイント＞

• 第三者による現場従業員へのヒアリングを行う
• 優先度や重要性にとらわれず、課題を洗い出す

上司によるヒアリングでは、現状の不満や要望を正直に話してもらえない恐れがあります。第三者にヒアリングしてもらい、小さな課題もすべて洗い出しましょう。将来的に大きなリスクとならないためにも、優先度や重要度にとらわれないことが重要です。

また、改善策の仮案を立てる際は、改善すべき課題の優先度と目標値を設定してください。闇雲に改善策を実行しても、効果が実感できないほか、改善策の実行に余計なリソースを割いてしまう恐れもあります。

次項では、業務プロセスの改善策例をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

業務プロセスの改善策例

業務プロセスの改善策例は、次のとおりです。

上記のとおり、課題によって改善方法は千差万別です。抱える課題に対し、原因を明確化させることで、適切な改善案を立案できるでしょう。

③立てた改善策がプロセス・フローそれぞれでマイナスの影響が出ないか確認する<

業務プロセスは各業務フローと密接に関わっているため、改善策がマイナスの影響をおよぼさないかを確認してください。各業務フローは、前後のフロー（部署や工程）と連携して稼働しています。

一つの業務フローを改善したことで、そのしわ寄せが別のフローに及んでしまっては、業務プロセスの改善とはいえません。改善策を立案する際は、ほかの業務フローへの影響も考慮しましょう。

④計画を実行する

改善案を実行して、業務プロセスの改善に乗り出しましょう。ただし、実行の際は、効果測定できる環境作りも考慮する必要があります。

改善案はあくまでも仮案であり、期待する成果を得られるかはわかりません。目標値を記載した評価シートやフィードバックのための面談など、効果検証に向けた環境構築も同時に進めましょう。

⑤結果を振り返り必要に応じて改善を繰り返す

改善案の実行後は、結果の振り返りと改善を繰り返し、ブラッシュアップを行いましょう。前述したとおり、仮案としての改善案は、必ずしも成果を得られる手段とは限りません。

数ヶ月のスパンで計画・実行・評価・改善（PDCAサイクル）を繰り返し、業務プロセス改善のブラッシュアップを図ることが重要です。

業務プロセス改善を図るうえで注意すべきポイント

業務プロセス改善において、注意すべきポイントを3つ解説します。

改善案を独断で推し進めようとしない

業務プロセスの改善案を経営者の独断で推し進めようとしても、従業員から反感を買う恐れがあります。たとえば、作業方法が変更された場合、慣れない従業員は「なぜ従来の方法ではできないのか」と疑問を抱くかもしれません。

改善案が適切に運用されないリスクも出てくるため、実行の際は必ず従業員の理解を得るようにしましょう。

現場の意見を吸い上げずに実行しようとしない

現場の意見を吸い上げずに改善案を実行しても、期待する成果を得られない恐れがあります。業務プロセスの改善を実行するのは、現場で作業する従業員です。

各業務フローにおけるリードタイムやミスの頻度、生産性など数値をもとにした改善案では、現場レベルの課題は解決できないかもしれません。従業員へのヒアリングは必ず行い、現状の不満やトラブル、課題などの吸い上げを行ってから、改善案を立案しましょう。

失敗時だけでなく成功時もPDCAサイクルを回す

改善案の成功時もPDCAサイクルを回さなければ、継続的な改善は見込めません。業務プロセスの改善は、半年～1年のスパンでPDCAサイクルを回し、課題解決に取り組みます。

一度成功しただけでPDCAサイクルを止めてしまっては、新たな課題・トラブル発生時に対処できない恐れがあります。継続的に効果検証できるタイミングを設定し、経営課題の抜本的な解決を目指しましょう。

まとめ

業務プロセスの改善は、人的リソースや業務効率の最適化、リスクマネジメントなどの効果に期待できます。社内の各業務をフロー化し、業務プロセスとして可視化することで、課題の発見・改善案の立案につながるでしょう。

ただし、業務プロセスの改善案は、経営者目線になりがちです。実行するのは現場の従業員なので、現場レベルの課題・不満をヒアリングしつつ、改善案の実行を理解してもらえるよう努めましょう。

課題の抜本的な解決には、社内全体で業務プロセス改善に取り組むことが大切です。