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「ブランディング」の進め方をマジメに解説してみた。 vol.6


ターゲットに響く「最適なPR」とは?
決め手は『独自の魅力』のアピール強化
第6回/『何を』

〜独自の強みを抽出し 魅力あるメッセージに翻訳する (中編)

ターゲットからのベクトルにきちんと応えられる独自性…
それがブランド・コミュニケーションにおいて最も大切な『USP』。
今回はその抽出・仮説化の手順を簡単に紹介しておきます。
とは言え、ちょっと長くなりそうです。予めご了承を。

■『USP』を抽出し仮説化する

① 自社の「できること・強いこと」を整理する

まず、自社をできるだけ客観的に分析し、
「提供できること・強み・価値」を書き出してみます。
その際には、バラバラと思いつくままに…ではなく、
領域単位で考えていくと出しやすいはずです。

例えば、
実績・経験の側面から、設備・資源の側面から、規模・キャパシティの側面から…
といったアプローチの仕方で。
他にも、体制・仕組み、人材・リソース、技術・ノウハウ・知識など、
前回:vol.5の冒頭の図解の中にも詳しく記載してあります。

併せて自社分析の一環として、
また次の『どう伝えるか』を設計するうえでの準備として、
現状の営業活動や販促・PR活動の実態と評価もこの時点で整理しておきましょう。

② 競合先の「できること・強いこと」を整理する

自社と競合する企業・ブランドを具体的に抽出します。
そして今度はそれら競合の「強み」も客観的に整理します。
指標は、①同様、領域ごとに。
加えて想定の度合いが強くなってしまいますが、
今後拡張またはプッシュしてくると思われる事業としてのジャンルや
ターゲットから見たイメージ・評価も追記しておきます。
さらに、最近の営業活動や販促・PR活動の動向・成果も①の自社分と同じように。

③ 上記①と②を比較し「独自性」のあるものを選抜する

整理した①と②を比較し、競合する先と異なる自社の特長、
差別化が可能だと思われる自社「ならでは」の強み、
自社「らしい」強みとなる項目を選抜します。

この時点で注意が必要なこと。

コモディティ化が進んでしまっている価格やスピード・時間対応などを選ぶなら、
それは圧倒的な水準でない限り、強みであると言い切りにくいのが実情。
安い・早い…は、今や標準品質。
あえてそこを独自性として押すのなら、それが実現・提供できる背景となる部分…
「なぜそれが可能なのか?」「○○だからこそ、こんなに安い・早い」と
セットにしたアピールが必須です。

④ 上記③での選抜項目をターゲットのニーズと照合する

選抜した③の結果を、先の『誰に』のステージで集約した、
ターゲットの購買・依頼・契約・発注を決める過程で発生する
「ニーズ・要望・期待」や「意思決定の基準」と照合し、篩(ふるい)にかけます。
そのうえで、マッチング感が高いと思われる要素・キーワードを再度抽出したもの。
これが「ターゲットのニーズにフィットした独自性の高い強み」=『USP』。
すなわち自社の勝負どころです。

残った要素・キーワードが…
・ターゲットに「それっていいねぇ!」と実感してもらえることか?
・ターゲットにとっての「いいこと」がはっきりしているか?
・選ばれる決め手としての手応えがあるか?
・自社の長所・カラーが濃く出ているか?
・ターゲットに必ず約束できることか?
などターゲットの厳しい目で最終チェック。『USP』の検算を。

vol.2でも触れましたが、
発信する側が「こんなにいいことが提供できる」と思って投げたことが、
ターゲットに思ったほど響かない失敗のケース。
そこに陥らないためにも、自社の「できること・やりたいこと」が、
ターゲットにとっての「欲しいこと・必要なこと」や
「嬉しいこと・期待していること」にきちんとリンクしているのか?
その俯瞰的な検証こそが、
ビジネスとして継続・拡張させていくためのカギを握ります。

業界大手の企業が「いいものを安く提供します」と唄った場合、
明らかにスケールメリットがわかるため、ユーザーも納得しやすいはず。
一方で、中堅規模や地域に根ざす企業にとっての「いいところ」は、
より具体的で、その背景が見えて、それ以上の付加価値が感じられること。
期待される軸、評価される尺度が異なってくるのでは?
そんな見極めも大事です。

補足をひとつ。
vol.3で、『誰に』のターゲット・プロファイルを深めるヒントとして、
自社の既存のユーザーに注目することを述べました。
『USP』に関してもそれは当てはまります。
もし可能であれば、直近数年の自社顧客に、
「なぜ自社から購入、自社と契約、自社に発注することに決めたのか?」
「他社に比べて自社の何が良かったのか?」
を、ぜひ詳しくヒアリングしてみてください。
コスト・納期・キャパシティ等の物理的なアドバンテージ。
品質・素材へのこだわり、ノウハウやセンス、技術的なこと、設備・施設・環境、
希望に対する柔軟度や提案力…といった可視性のあるものばかりではなく、
熱心さや真面目さ・誠実さ、場合によっては明るさやしつこさなど、
意外なほど極めて情緒的なものであったりもします。
これも自社の持つ『USP』のひとつの側面。
把握したうえで、以降のアウトプットを組み立てる流れの中で、
ぜひ有効に活用したいもの。

この一連の『USP』抽出・仮説化の流れに関しては、
かなり煩雑な情報の整理やまとめの作業が必要なうえ、
ユーザー寄りのより俯瞰的な目線が有効なこともあり、
実際には、ヒアリングやインタビューの調査段階から、
我々の方でサポートさせていただくケースがほとんどです。

ですが、最近はその手順のアドバイスや進行のファシリテートをしながら、
クライアントとなる企業の主要関係者の方々ご自身に、
ワークショップ的に実際にやってみていただくカタチもお勧めしています。

自社の強みやターゲットからの要望・期待などを客観的に考えてみること、
そしてそれを社内のメンバー間で改めてディスカッションすることは、
いろんな新しい気づきや視野の広がり、社内の相互理解なども生まれ、
とても意味のある場になった…となかなか好評。
で、これが結構盛り上がったりもします。

大型付箋や模造紙を使っての、『USP』仮抽出:「ワークショップ」プログラム。
ご興味のある方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせいただければと。

今回はこのあたりで…。
次回は、決定的な『USP』が出てこない場合の対処について。
ということで続きます。

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