「なぜコピーが必要なのか」３つの理由（１）買う理由をつくる

買う理由をつくる

私たちはふだん、モノを買うときにどんな理由で商品を選んでいるでしょうか。
価格、口コミ、実感、パッケージ、店員のおすすめ、あるいはただなんとなく、とか。
理由はきっとさまざまでしょう。
人は直感でモノを選びその理由を後付けしているだけ、と説明をする人もいます。
いずれにせよ、目を閉じてブラインドテストのように商品を求めているのでもないかぎり、
私たちは何かの理由をもって商品を選んでいます。

コピーの最も基本的な役割は、
この「理由」を用意してお客さんに提案することにあります。

今の時代、商品は膨大にあり、しかも似たような機能をもつ商品であふれています。
お客さんとしても、選ぶ理由を初めに教えてくれたほうが判断しやすい側面もあります。
この「うちの商品はよそよりもココが優れてまっせ！」というポイントを
マーケティング用語で「USP」と呼びます。

「ココが優れてる！」というポイントが、
お客さんの「かゆいところに手が届く」ようにツボを突けたとき、
お客さんは商品を「ほしい！」と思うようになる、とされています。

こうしてあっさり説明してみると簡単そうですが、これがじつは難しいです。

考えてもみれば、
お客さんが素直に「いいな！」と思えるようなポイントであれば、
他社商品も当然そなえているでしょうから「優位性」になりにくいですし、
自社商品の「独自性」から他社よりも優れているポイントを抽出してみても、
それがそのままお客さんのツボを突けるとも限らないからです。
あるいは、「うちの商品には特に優位性などない」と堂々と断言するクライアントもいます。
（私はそういうケースにこれまで何度も立ち会ってきました）

では、そんなときにはどうすればよいのでしょうか？

これはもう、地道に「探す」ということに尽きます。
クライアント自身でも気づいていないことや、お客さんも気づいていない魅力を、
手を替え、品を替え、目線を変え、常識を変えて、探します。
コピーライターという仕事を長くやっていると、「探し方のコツ」はおおよそ摑めてきます。
そして、「企業の言いたいこと」を「お客さんの聞きたいこと」にうまく翻訳していきます。

私の仕事で説明をします。

「世界４大ロボット企業」に数えられるロボットメーカーの製品で「検査用ロボット」を告知宣伝した案件です。
BtoBの産業用ロボット業界では、各社の違いというのがかなり細かな機能の違いになりがちで、
クライアントの製品にはこれまでの技術の蓄積により圧倒的な機能の優位性はあるのですが、
それをいきなり訴えても込み入った話になりがちという問題がありました。

そこで、世界的メーカーである実績や歴史をなるべく分かりやすく伝えられて、
お客さんが納得しながらすんなりと呑み込んでもらえるようなポイントを探しました。

これはBtoB商品で、お客さんが業界関係者に限られていることからたどり着いた表現です。
もし、クライアントが巨大メーカーでなかったり、お客さんがBtoBではなかったりすれば、
まったく別の訴求ポイントにたどり着いていたはずです。

USPの探し方は、業界（マーケット）やお客さん（ターゲット）の状況で変わります。
また、クライアント側が必ずしもUSPを的確に把握しているとも限りません。
（自社製品の強みを客観的に見られるのは、外部の人間だったりするからです）

今回は、USPで「買う理由をつくる」というお話をしてきましたが、
似たような機能の商品が膨大にある今の時代には、
USPだけではやはりどうしても対処できないケースが多くあります。
そんなときにはもっと新しい視点で商品と向き合う必要が出てきます。
次回は、コピーが必要な２つめの理由としてそんなお話をしたいと思います。