ARTICLES 有限会社プレゼントの記事一覧

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企業広報についての“基本”。

さまざまなフリーペーパーの編集をしていて、情報掲載の許可と内容確認を企業・団体の広報部門を通してよく行うのだが、その都度、企業広報について考えさせられる。“基本”と書いたが“”付きなのは、私が広報の専門家でなく内容が限定的だからだ。しかし、危機管理学部のある日大が危機管理を誤った例のように、専門家が常に正しい訳でもなく私なりの視点も少しは役に立つのではと思った。 さて企業広報についてである。こと外部からの問合せに限っての話だが、第一に「迅速であること」を望みたい。最近はメールで問合せ窓口を設けるのが一般的だが、少なくとも自動返信でメールを預かった旨の連絡はしてほしい。この自動返信機能は大企業であれば当然かと思われるかもしれないが、行われていない企業は当然ある。そして担当者による何らかの通知を遅くとも翌日に行ってほしい。いくら多忙でも当日に返信しないのは、ビジネスでは礼を失する。この迅速性は、危機管理の面から言っても同様だ。 次に「問合せしてくる人間も顧客の一人と考えること」と言いたい。いきなり連絡して「情報掲載を、情報の確認をお願いしたい」という文面を見れば「どこか胡散臭い」あるいは「面倒だな」と思われて致し方ないし、だからこそ私も依頼する際のノウハウは積み重ねたつもりだが、居丈高であからさまに面倒だと言わんばかりの文面や会話に出くわすこともある。「顧客の一人」と書いたが、なかには実際に私が顧客の一人である場合も多い。その際、私が憂慮するのは、広報部門の態度が営業やリアル店舗の接客に結び付いていないかという点だ。そうした関連性をもつのが企業文化であると思うし、だからこそ広報部門の姿勢は重要な位置を占める。 もちろん、「私も顧客の一人なのだからお客さま扱いしろ」などと言うつもりは全くない。しかし、仮にも情報提供という同じ目的に向かう存在に対し、最初から上から目線の態度を見せてしまったら、そういう企業文化をもった会社であると思われても不思議ではない。もちろん、総じてトップメーカーの対応の機敏さ、丁寧さは推して知るべし、である。

  • コピーライティング

「追及」という落とし穴。

過去に何度か目にし、関係者でもないのに指摘もしたことがある誤字に「追求」を「追及」と記した例がある。「新明解国語辞典」(改訂前の第三版)によれば、「追求」は「目的の物が手に入るまであらゆる手段を尽くすこと」であり、「追及」は「(1)逃げる者を追うこと(2)事件の責任などを追いつめること」である。したがって広告文でよく用いられる「理想を追求」などのフレーズで「追及」と書くのは誤字なのだが、恐らくインターネット検索をすれば、WEBサイトにこの種の誤字が簡単に見つかるはずだ。先日もある不動産の仕事で、地方行政も絡んだ首都圏の大規模開発に同様の誤字を見つけた。しかし基本理念に使われていたので修正はきかないのかもしれない。この種の「追及」の誤字は、あまりに一般化しているが故の落とし穴と言える。原因は、コピーライターの不注意であることは当然だが、「激安」が「爆安」になるのと同じように、より目新しい表現を求める関係者の意図が働いている気がしてならない。つまり「『追求』はよく目にするし、『追及』の方が強い気がする」という安易な選択がもたらした誤字という気がするのである。もちろん広告はときに日本語文法の枠を外れる。しかし、クリエイティブな狙いもなく誤った漢字を使う行為は避けるべきである。  

  • コピーライティング

何も言わなくても書けるでしょ、プロなんだから。

この言葉は、昔あるクライアントから、打合せ時に実際に言われた。半分、冗談ではあったのだが、もちろんそれは不可能だ。いや、むしろ小さなことや頭の片隅にあるような「これは言わなくても」ということこそ、打合せ段階で伝えてほしい。 私の失敗談を話すと、某企業のWEBサイトの採用ページで社員の方数名にインタビューし、コピー作成した後、「もっと若々しさを出してほしかった」と言われたことがある。若手社員の声を聞いたのだからもっともかもしれないし、そもそも私の事前の確認が不十分だった、と言われれば返す言葉はない。しかし、あえて私の側に立って申し上げると、もしこの一言をインタビュー前の打合せ時に言っていただければ、回答の導き方も違ってくるし、コピーの内容やトーンも当然、変わる。しかもこの「若々しさ」だが、何を指して言っているのか分からない。したがって事前に耳にしていれば、まず「若々しさ」を定義した後で、それを“仕事への姿勢で出すのか、エピソードで演出するのか、話し方のトーンで伝えればよいのか、なぜそれを期待されるのか”などを具体的に確認し合えたのである。 この出来事に限らず、もちろん事前打合せでの確認は大切にしているのだが、直接、担当の方とお話しできない場合も多い。 だから改めて。「何も言わなくても書ける」ではなく「何でも言えばよく書ける」くらいに思っていただきたい。インタビュー時の質問事項は事前に確認いただくのが常だが、仮に全ての取材が終わった後であっても、例えば「元気さを伝えたい」と言われるのと「誠実さを出したい」と言われるのとでは、たったの8文字の情報でもコピーは大きく変わるのである。「何でも言えばよく書ける」はもちろん、コピーのトーンだけに限らない。

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何でも「リライト」と言っていないですか?

リライトを定義しよう リライト(rewrite)という言葉は和製英語ではなく「書き直す」という意味のれっきとした英語だ。一度書いた文章を書き直す。単にその意味なら、別に書く仕事をしている者でなくても行為の内容は想像できよう。しかし、これがひとたび広告業界で使われると概念は混沌の度を加える。そこで本論ではまず「リライト」とは何かを私なりに定義し、それと照らし合わせる構成で、現在、誤って使われている広告業界の「リライト」の用法について指摘してみたい。 と言っても、リライトの定義は明らかだ。要は「書き直す」という意味に限定すればよいのである。では「書き直す」とはどのような行為か。 “既に書かれた文章を直す”のだから元の文章があるというのが最低条件なのだが、広告業界の人間の多くがこの点を無視している。私はこの “元の文章”を前提に、広告表現における「リライト」を次のように定義する。 「元となる一つの文章を(1)内容は変えずにトーンを変える。(2)内容は変えずに字数を変える(増減する)。(3)内容から一定範囲の情報を削除して文章を変える。(4)内容に一定範囲の情報を付け加えて文章を変える。」以上である。ここで重要なのは「元となる一つの文章」という点だ。複数の文章ではない。 ある別の人物が書いた、元となる一つの文章を上記の(1)~(4)の形式で書き直す作業こそが「リライト」である (ただし、(4)は本質的にリライトではない。理由は後述する)。 リライトを行ってみよう それでは先の定義についてさらに詳しく説明していきたい。(1)の「トーン」には微妙な意味合いがある。「新明解国語辞典(第三版)」に よれば「音・色などの微妙な調子」とあるが、もちろん文章のトーンもこの「微妙な調子」そのものだ。 ここでは、次の文章を基本文として「リライト」の方法を例示していきたい。 ■基本文(元となる一つの文章) 「日本の風土と時代に適した住まいをつくり続けてきたXY住宅の技術を、日本社会がいま直面する高齢化という課題のために広く役立てていきたい。 ゴールド住宅「PLENTI」は、私達のそんな思いから出発しました。 高齢者の皆様が心身共に健やかに暮らせる住まいへ。「PLENTI」というブランドには“豊かさ”あふれる人生という希望を込めています。」 私が書いたあるコピーを脚色したものである。もちろんネーミングなどは架空のものに変えた(「Plenty」=豊かさ から作成)。これは、 ある住宅メーカーのマニュアル向けに書かれたコピーが下敷きになっているため、文章の「トーン」としてはやや硬めである。定義(1) の事例として、このコピーを「もっとやわらかくしてほしい」というオーダーがあった場合、文章は次のように変わる。 ↓ 「日本の自然や人の暮らしにふさわしい住まいをお届けしてきたXY住宅の技術を、社会が向き合う高齢化というテーマに活かしていきたい。 ゴールド住宅「PLENTI」は私たちのそんな願いからスタートしました。 高齢者の皆さまが、すこやかな心とカラダで暮らせる住まいへ。「PLENTI」という名には“豊かさ”あふれる人生という願いをこめています。」 漢字をひらがなに変え、「心身」などの熟語や「日本社会が直面する」のように固い表現をやわらかく変えた。「トーン」を変えるとはこのような ケースのことを言う。ちなみに文字数はどちらも165文字に整えた。 次の定義(2)内容を変えずに字数を変える(増減する)場合が、これが最も一般的なリライトと言ってよい。まず165文字の基本文を115文字(約70%) に減らしてリライトしてみる。 ↓ 「日本にふさわしい住まいを目指してきたXY住宅の技術を、高齢化という課題に活かすためゴールド住宅「PLENTI」は出発しました。高齢者 の皆様にとって快適な住まいへ。「PLENTI」には“豊かさ”あふれる人生という希望を込めています。」 また、リライトの要請のなかには、主としてデザイン上の理由から追加情報なしで文章量を増やしてほしいという要請もある。165文字の基本文を200文字(約121%)に増やしてみる。 ↓ 「日本が育んできた風土と時代にふさわしい住まいをつくり続けてきたXY住宅の技術を、日本社会がいま直面している高齢化という課題のため に広く役立てていきたい。ゴールド住宅「PLENTI」は、お客様のことを考えた私達のそんな思いから出発しました。 高齢者の皆様が心もカラダも共に健やかに暮らすことができる住まいへ。「PLENTI」というブランドには“豊かさ”あふれる人生を送っていた だきたい希望を込めています。」 定義(3)は、定義(2)における文章を減らす指示に“ある条件が付く”場合である。 削除する内容が条件により規定されているだけで作業としては(2)の文章量減とそれほど変わらない。もちろん、長文コピーで削除する指示が複雑なケースは 作業の難易度が高まるが、リライトの前提であった「ある一つの文章」を「書き直す」という定義からは外れない。次は「日本社会がいま直面する 高齢化という課題というニュアンスはやや硬いから直してリライトしてほしい」という指示があった場合のリライト事例だ。文章量は同じく115文字 (約70%)とした。ただし、単に削除するのではコピーとして成立しない。したがってリライト後の文章は次のようになる。 「日本に合った住まいを目指してきたXY住宅の技術を、誰もが迎える老後の日々に活かすためゴールド住宅「PLENTI」は出発しました。高齢者の皆様 にとって快い住まいへ。「PLENTI」には“豊かさ”あふれる人生という希望を込めています。」 この場合は指摘された部分を「誰もが迎える老後の日々」という表現に変えたが、条件が規定されているため定義(2)の文章量減よりやや作業的な手間はかかる。 問題は定義(4)である。この「一定範囲の情報を付け加えて」の「一定範囲の情報」がもう一つの新たな文章となる場合があるのだ(この場合は『リライト』の定義を逸脱する)。しかし、 ここであえて言うが、仮に「一定範囲の情報」が一つの単語や文節以上の長さであった場合でも、「元となる一つの文章」が設けられている場合は リライトと拡大解釈することを否定はしない。 ただし、リライトに対し一般的に持たれている“手間がかからない”というイメージから考えれば、この「一定範囲の情報」 が長くなればなるほどリライトの基本的な定義からは外れ、それだけ手間がかかることは理解しておいてほしいと思う。 たとえば下記のような「一定範囲の情報」を「元となる一つの文章」に加える場合はもちろん難易度は高まる。文章量は定義(2)の文章量増の 場合と同じく200文字(約121%)とした。 (追加された『一定範囲の情報』231文字) 「1960年7月、住宅のコンサルティングを行うエックス住宅産業として設立された当社は、70年、東京・高輪に新本社を建設し住宅建設部門を新設した。そして翌年、米国内第三位の売上高を誇っていたXYカンパニーとの合併に伴い社名をXY住宅に変更。72年に「XY」ブランドを基幹商品として売出して以降、高い評価を得てきた住宅づくりの視点は「PLENTI」のスロープ付きの玄関や手すりを施したトイレ・バスルーム、オール電化に対応した操作パネルの使いやすいデザインに生きている。」 ↓ (リライト後の文章) 「1960年の創立以来、日本に合った住まいを提案してきたXY住宅の技術を、社会が直面する高齢化のために役立てたい。ゴールド住宅「PLENTI」 は、30年以上「XY」シリーズをお届けしてきた私達が、新たな時代への視点から生んだブランドです。 スロープ付き玄関や手すりを施したトイレ・バスルーム、使いやすい操作パネルなど、「PLENTI」という名には心地よさを通した“豊かさ”ある 人生への願いを込めています。」 以上から分かる通り、“ほぼ二つの文章”を合わせたコピーは、定義(3)までの内容とはかなり異なる。つまりそれだけコピーライターの裁量に 委ねられる部分が高まる訳で、当然、そのための思考時間は多くなり手間がかかっている。 ここで留意したポイントは(1)創立年を残して歴史を語り(2)「30年以上」と記述することで「XY」シリーズの歴史も語り、一方で(3) 「70年、東京・高輪に新本社を建設し住宅建設部門を新設した。そして翌年、米国内第三位の売上高を誇っていたXYカンパニーとの合併に 伴い社名をXY住宅に変更。」という部分は基本文の「PLENTI」ブランドに直接関わらないより沿革的な色彩の強い内容なので削除し(4) 「高齢者の皆様が心身共に健やかに暮らせる住まい」という抽象的な記述の代わりに「PLENTI」の具体的な特長を入れた。 以上4つの留意点を反映させるために、前後の文章は大幅にその構造を変えている。実は、これに類する作業の多くも、広告業界の常識として「リライト」の範囲に含まれるが、私は「(『元となる一つの文章』がある以上)論理的にはリライトだが、現実的には「元となる二つの文章」があるのに近く、“手間がかからない” という意味が込められたリライトの範囲を超えており、リライトとは言うべきでない」という立場をとりたい。しかし、そんな反論を仕事でぶつけることは、もちろんないが。 リライトとは呼べないリライト さて、最後はリライトと称してオーダーされるケースで、論理的にも「リライト」とは認められない場合だ。つまり、2つ以上の文章(資料)を提出し、それを合体させて一つの新たな文章として書き起こす(『書き直す』ではない)というものである。こうしたオーダーを「リライト」と言って 依頼される方は「元の文章があればみんなリライト」と思われている方だ。つまりそこには「元の文章があれば書く手間が省ける」という 誤った認識がある。もちろん「リライト」は「元となる一つの文章」をベースに書く行為であるから、ゼロから書き起こす場合より手間は かからない。しかし、それはあくまで“元となる一つの文章”を書き直す場合であり、前述の定義(1)~(4)の場合である(4には条件が付く)。 それが「元となる二つの文章」であればどうか。あるいは「元となる三つの文章」ではどうか。文章はパズルではない。複数の文章を単に つないだだけでは一つの文章にはならない。しかも通常は、例えば「二つの文章を合わせて300字で」というように字数の制限がつく。した がって「元となる二つの文章」を字数制限付きで一つに文章化する行為になるのだが、それは単に「二つの資料を元に新たに文章を書き起こす」通常のコピー作業と何ら変わらないのである。 つまり、コピーを作成する行為の殆どは“ある複数の資料あるいは情報を元に、想像力を働かせて媒体に合わせた最適の文章に書き起こす作業”なのである。 それは、駅貼りポスターのために作成するたった1本のキャッチフレーズも同様である(1本のキャッチフレーズを作成するためにも膨大な資料・情報と向き合うからだ)。コピー表現はもちろん、コピーライターの裁量によって360 度変わる。私がここで「殆ど」という言葉を使ったのは、例えば分譲マンションの販促ツールなどで、ある家族の日常(舞台はその分譲マンション) をあたかもエッセイのようにコピーライターの創作により作成するケース等を例外として考えたからだ。しかし、厳密にはこの場合も当の 分譲マンションの特性はコピーライターの頭に入っており、エッセイの発想はそこから生まれている。したがって、コピーを作成する行為はこうしたケースを含めても限りなく100%に近く“ある複数の資料あるいは情報を元に、想像力を働かせて媒体に合わせた最適の文章に書き起こす作業”と言えるのだ。 これらのキャッチフレーズやエッセイのように、咀嚼し整理し頭に入れた資料(情報)を元にゼロからコピーを書き起こす作業は、時に、元となる複数の文章からコピーを書き起こす作業よりも手間がかからない。つまり、元となる文章が存在する分だけ加工に手間がかかってしまうという逆転現象さえ生まれるのだ。それは、元となる複数の文章を一つの文章にするに当たって、相互に論理的な矛盾を含んでいる場合があるからである。 それでは、こうした「リライト」とは言えない場合を架空のオーダー事例をもとに説明していくが、実はこの事例のような内容も、広告業界の方々は堂々と「リライト」 と言ってオーダーされるのである。ここまで読まれた方は、定義を踏まえてぜひよく読んでいただきたい。与えられた文章は、次のA~Cとする。 ・文章A 「自立や尊厳を含む超高齢社会の根本的な価値は、いかなる分野でもその基礎に置くべきものです。高齢者は個々の権利や 生活を営む上で必要とされるニーズについて、充分に享受し、健康長寿と生活の質(Quality of Life=QOL)的向上 をもたらされるべきです。幸福とQOLの向上に焦点を当てた、超高齢社会にある現代とそれに関連する保健医療 分野及び社会経済的分野との密接な関わりに対し、政策に関連した実質的解決方法の探索を推進すること。医薬処方など を含む高度医療技術同様に、個人、家族、地域(コミュニティ) レベルにおける特異的なニーズに対応しうる費用対効果 に優れ統合されたヘルスケアに焦点をあてたWHOのプライマリー・ヘルスケアの概念を導入し、推進することが肝要です。」 ・文章B 「加齢とともに身体機能が低下するので、ちょっとした段差が苦痛になったり、つまずきの原因になったりします。玄関のたたきから廊下への段差、部屋を仕切る建具の敷居、浴室やトイレの高低差など、高齢者にとって段差は身体に負担をかけるだけではなく、転倒の危険も潜んでいます。そのためバリアフリーが大切になります。階段はできるだけゆるやかな勾配で設計し、高齢者の昇り降りを楽にします。踏み外しても支えられるよう、手摺りも設けました。トイレや浴室にもほどよい高さに手摺りを取り付けています。暖かい部屋から寒い部屋へ移動したときに体が受ける急激な温度変化(ヒートショック)への対策も万全です。血圧の急変動や脈拍の変化など危険な状態になりがちです。浴室ヒーターの取り付けなどで、ヒートショックを防ぎます。間取りの角度からは、高齢者が気軽に用が足せるよう、居室とトイレは近くにレイアウトしたり、部屋間の移動が楽に行えるよう建具に配慮しました。また、夜間の移動危険を軽減するため、廊下には足元照明や残照式照明などを取り付けておくと安心です。」 ・文章C 「臀部の筋肉を見ると盛り上がった部分には人間の二足歩行を支えている大殿筋が覆っています。「立つ」「歩く」などの動きで日常的に使われる最も大切な筋肉です。しかし、老化によって衰える筋肉は中殿筋なのです。中殿筋は大殿筋よりも上に位置し、腰の下あたりから太ももの付け根に向かって縦に伸びている筋肉です。現代人はこの中殿筋が衰えがちです。」 このような(広告文とはかけ離れた)複数の文章を手渡されて、商品コピーのようなトーンに書き起こしてほしいというオーダーも実際にある。これも「元の文章があればみんなリライト」と誤解されている方にとっては「リライト」である。しかし、これこそ“ある複数の資料を元に、想像力を働かせて媒体に合わせた最適の文章に書き起こす作業”であり、コピー作成そのものだ。 試みに、この3つの資料を手渡された場合のコピー作成後の文章をお見せしよう。これは、内容を変えてトーンを変え、内容を変えて 字数を変え、内容から(コピーライター自身の裁量で)情報を削除し文章を変える作業であり、「リライト」ではない。 上記文章A~C(合計885文字)を元に70%(620文字)にまとめたコピー作成事例(企業名を『XY住宅』、ブランドを『PLENTI』とする)が次だ。 ↓ 「年を重ねるごとに、生活するうえでの負担が少しずつ増えていきます。年齢は、基本的な動作を支える筋肉の力を少しずつ奪っていくのです。XY住宅は、こうした人間の肉体的・生理的な変化を住空間の視点から見つめ直し、誰もが迎える高齢化というシーンに対応する住宅「PLENTI」を誕生させました。 同じ距離を歩いていても、年と共に負担が高まってはいませんか? 住まいにとっては高低差が大きな負担となります。そこで、玄関のたたきと廊下の段差や、浴室・トイレをはじめ部屋と部屋の高低差を解消し、全室バリアフリーを実現しました。階段の勾配もゆるやかに、昇り降りをラクにしています。また、廊下には足元照明や残照式照明などを設け、夜間の歩行にも配慮しました。階段から、トイレ、浴室へ、最適な高さを考えた手摺りも住みやすさへのポイントになります。 暖かい部屋から寒い部屋へ移動する際の急な温度変化(ヒートショック)への対応も、安心して暮らせる住空間にとって大切なテーマです。この点では、浴室ヒーターの取り付けなどで住まわれる方を守る心遣いをプラスしました。居室とトイレは近くに、移動が快適に行えるよう、間取りにも心地よさへの配慮を加えています。 カラダの変化をしっかりととらえながら、より高い生活の質(Quality of Life)をつくっていきたい。そんな思いから生まれた「PLENTI」には、XY住宅が目指してきた21世紀における人と住空間の一つの理想が込められています。」 上記文章A~Cと、この620文字のコピーを見比べていただきたい。大胆な情報の取捨選択をし文章Bの商品特長を中心に据えながらも、文章AとCのエッセンスは活かしている。また、商品コピーに仕立てるために新たな文章を大幅に加えながら、全体的なバランスをとって調整し最終的に70%と簡潔なコピーに仕上げた。したがって、文章A~Cと、それをもとにした620文字のコピーには品質的に大きな違いがある。このような作業も「リライト」と言われることがあると言えば、広告業界で「リライト」が置かれた位置がいかに曖昧で理不尽かがお分かりいただけるであろう。そして逆に、コピーを作成する作業の一端についてもお分かりいただけたかと思う。 このような仕事を(手間がかからないという意味を込めて)「リライト」と言われては困る。 ※改めて、そんな反論を仕事でぶつけることは、もちろんないが。

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「くりかえしネーミング」調査

何となく楽しい“くりかえし”手法 ひとたびネーミングを分析すると様々な法則が見つかるが、本来のネーミング作成は、商品やサービスなどが拠って立つ理念や具体的特長、目標などから 導き出すのが一般的だ。ただし、全国に散らばるお店や会社やグッズには、そんな常識を超越したネーミングもたくさんある。そしてこうした様々な表現手法の なかに“単語や音の繰り返し”という形式で作成されたネーミングがある。 〔くりかえしネーミング〕定義 (1)日本語・外国語を問わず「文字(単語)」が繰り返される場合と、同じ「音」が繰り返される場合の2つのケースを対象とする。 (2) 以下の品詞、用法は既存の表現でありクリエイティブな点が欠けるという理由で除く。 「わくわく」「らくらく」などの副詞、「さらさら」「つやつや」などの擬態語、「ぱちぱち」「ぶーぶー」などの擬音語、どんどん、時々、人々などの畳語(もしくは畳語の要素を備えた繰り返し)。 なぜか私は、行く先々でこのネーミングが(好き嫌いや良し悪しに関わらず)目に留まる傾向にあり、興味が高じて当社WEBサイトで少しずつ更新している。 http://www.present-inc.com/monthly/049.html 調査といっても仕事の片手間で行っているので、有名ブランドで記載されていない事例も多々あり、不完全なのは言うまでもない。インターネットも、もちろん多用しているが、足で稼いだ“ネタ”も多い。ただ不完全なるが故に、少しずつは更新したいしWEBサイトでは募集もしているが、なかなか進まない。もちろん、BTLをご覧の皆さまからの情報提供も、WEBサイトを通じてぜひお願いしたい(次々生まれるネーミングの世界にゴールはない のだ)。 気づかれてはいても、気にはとめられないこのネーミングスタイル。ちょっとのぞいてみてください。 ※「anan」の誌名は創刊当時「モスクワ動物園」で飼育されていたパンダの名で、一般公募で選ばれたようです。ただし、以下のネーミングでは、由来などの記述は行っておりません。 ●〔繰り返しネーミング事例受付〕n.k@present-inc.com ※ニックネームで投稿ください(もちろん本名可。私はすべてのSNSを本名で行っています)。 くりかえしネーミング一覧 【あ】 □うたごえきっさ藍あいあい藍 青森県青森市古川にある喫茶店。 □株式会社aiai(あいあんどあい) 埼玉県所沢市御幸町にある運送会社。 □I&I STORE  東京都渋谷区神南にある古着ショップ。 □アブアブ赤札堂 スーパーマーケットとファッション専門店の2業態で首都圏中心に28店舗展開。 □anan(あんあん) マガジンハウス発行の女性誌。 □安安(あんあん) 東京都江東区門前仲町にある居酒屋。 □餡庵(あんあん) 新潟県柏崎市にある甘味処。 □井井(いい) 函館市末広町にある和風ダイニング。 □enen(えんえん) 長野県安曇野市穂高有明のギャラリーショップ。 □音音(おとおと) 東京都内で店舗を展開する和食処。 □OMUOMU(おむおむ) 全国展開するオムライス専門のチェーン店。 □OLIVE des OLIVE レディースファッションブランド。 【か】 □CACHE CACHE(かしゅかしゅ) レディース向けのバッグブランド。 □果歩果歩(かほかほ) 京都府丹波町和知にあるケーキ工房。 □かんかん 神奈川県横浜市都筑区、JR横浜線「鴨居」駅近くにあるショッピングパーク「ららぽーと横浜」内にあるレディース衣料&雑貨店。 □KiKi京橋 大阪府の京阪京橋駅付近にある複合商業ビル。 □CATCAT 広島県三次市三和町上壱にあるカフェ。 □CanCam(きゃんきゃん) 小学館発行の女性ファッション誌。 □魚魯魚魯(ぎょろぎょろ) 都内に数店舗ある居酒屋チェーン。 □キレイキレイ ライオンのハンドソープ。 □金金(きんきん) 神奈川県藤沢市片瀬、江ノ島近くにある焼肉店。 □クリクリ 購入金額の3%が募金・寄付されるショッピングサイト。 □恵々(けいけい) 東京都品川区西五反田5丁目にある台湾料理店。 □胡胡(ここ) 神奈川県鎌倉市御成町にある中国古典家具や中国茶などのお店。 □COCOLULU(ここるる) レディースファッションブランド。 【さ】 □saku saku(さくさく) テレビ神奈川の音楽情報バラエティ番組。 □茶流彩彩(さりゅうさいさい) コカ・コーラの無糖茶ブランド。 □sisii(しし) レザーを使ったアイテムに定評のあるファッションブランド。 □Sitosu(素と素=しとす) 愛媛県今治市大西町新町にあるカフェ。 □ShouShou(しゅしゅ) 角川書店発行の女性誌。 □Su Su Su(すーすーすー) 大阪府大阪市中央区東心斎橋にあるイタリアンバール。 □中華菜館世世(せせ) 兵庫県神戸市北区にある中華料理店。  □ソーソー LinuxMania、Aozora Viewerなどを手がけるIT関連企業。 【た】 □和牛焼き肉専門 泰泰(たいたい) 愛知県名古屋市中村区平池町にある焼肉店。 □磔磔(たくたく) 京都府下京区富小路仏光寺の近くにある老舗ライブハウス。 □Tam Tam(たむたむ)。 全国に数店舗展開する総合ホビー専門店。 □CHIKA CHIKA BOOM BOOM(ちかちかぶーんぶーん) 株式会社ワールドが展開する子供服のブランド。 □チキチキボーン 日本ハムの骨付フライドチキン。 □チチカカ 中南米の民芸品や雑貨などが揃うエスニックファッションブランド。 □つばらつばら 鶴屋吉信の和菓子ブランド。 □TEKETEKE(てけてけ) 静岡県三島市にあるファッション&アクセサリーのお店。 □おにぎり田田(でんでん) 東京都渋谷区代官山にあるおにぎり専門店。 ※東急百貨店東横店「Food Show」にも出店。 □TOTO(とうとう) バス・キッチン・トイレタリー用品のメーカー。 □toto(とと) スポーツ振興のために設立されたサッカーくじ。 □徒歩徒歩亭(とぼとぼてい) 四ツ谷駅前の新宿通りから少し入った路地にある中華料理店。 □TOMA・TOMA(とまとま) 主婦の友ダイレクトが発行する育児関連商品の通販カタログ。 【な】 □ナノナノEX 大豆イソフラボンが入った抑毛リキッド。 □NAF NAF(ナフナフ) フランス北部のコルマーにある洋服店。 □娘娘(にゃんにゃん) 福岡県久留米市にある餃子専門店。 □NOONOO(ヌーヌー) 赤ちゃん用トイブランケットのブランド。 □ネイルネイル (株)Cラボラトリーズが展開するネイルグッズのブランド。 □ねるねるねるね 1985年よりクラシエフーズ(旧カネボウフーズ・ベルフーズ)から発売されているお菓子。 □no!no!SKIN(ノーノースキン) 自宅で行えるフェイスケア器具。 □ノニノニインターナショナル 栄養豊富なノニの実を使った製品を展開するメーカー。 【は】 □好好(はおはお) 東京都西五反田にある中華料理店。 □HusHusH(はしゅはしゅ) (株)ワールドの一ブランド。 □花の花(はなのはな) (株)日本香堂が展開する香水香のブランド。 □BeBeBe(ビービービー) ベルギーのチョコレート専門店。 □人と人と(ひとひと) 東京都新宿区の四ツ谷駅前にある寿司とおばんざいの店。 □ピュアピュア 三菱レイヨン(株)が展開する脱塩素シャワーのブランド。 □furfur(ファーファー) 2006年よりスタートしたファッションブランド。 □風風亭(ふうふうてい) 関東・関西併せて30店舗以上を展開する焼肉チェーン。 □Folli Follie(フォリフォリ) ギリシャのジュエリーブランド。 □ふく福(ふくふく) 鹿児島県奄美市の入舟町バス停前にある小料理屋。 □Francfranc(フランフラン) 「カジュアルスタイリッシュ」をコンセプトに掲げるインテリア・雑貨のショップ。 □Free&Free(フリーアンドフリー) ライオン(株)が展開するヘアケアブランド。 □BLUE BLUE(ブルーブルー) (株)聖林公司の一ブランド。 □∞(むげん)ペリペリ お菓子などの「あけくち」をめくる感覚を再現したキーチェーン型玩具。 □ほいほい 神奈川県鎌倉市にある喫茶・お食事のお店。 □BONABONA(ボナボナ) 真空パック機などを展開する家電ブランド。 【ま】 □マグマグ (株)ビジョンが展開する赤ちゃん用マグカップ。 □麻麻(まあま) 岐阜県瑞穂市別府にあるラーメン店。 □居酒屋まま 島根県出雲市平田町にある居酒屋。 □SOY DINING豆々(まめまめ) 神奈川県横浜市都筑区、JR横浜線「鴨居」駅近くにあるショッピングパーク「ららぽーと横浜」内にある和ダイニング。 □ミャウミャウ 植物性乳酸菌を配合したキャットフード □mimi(ミミ) エム・アンド・エム(株)が展開する児童乗物及び育児用品のブランド。 □珉珉(みんみん) 山口県光市にある中国庶民料理 餃子舗。 ※大阪本社で、やはり餃子が有名な飲食チェーン(株)珉珉本店もある。 □珉珉打破(みんみんだは) 常盤薬品工業(株)が製造・販売するカフェインドリンク。 □ムシムシマン ドギーマンハヤシ(株)が展開するする昆虫用グッズのブランド。 □ムルムルバターム 濃厚なツヤのある唇に導くリップクリーム。 □メイメイ (株)アイルヴェールが展開するベビースキンケアのブランド。 【や】 □居酒屋家家(やや) 福岡県福岡市城南区片江にある居酒屋。 □やんやんマチコ 癒し系アニメーションシリーズ。 □幽☆遊☆白書(ゆうゆうはくしょ) 少年「ジャンプ」掲載の漫画。 □yom yom(よむよむ) 新潮社の雑誌。 【ら】 □ラブ・ラブ・ラブログ タレント、谷ちあきのブログ。 □リンガリンガソープ インターネット販売を行なうオーガニックソープ店 □リングリングサーカス アメリカの有名サーカス。 □ルンバルンバ ファミリーレストラン「びっくりドンキー」のキャラメル風味のソフトドリンク。 □LoLo Cafe (ろろ) 静岡県浜松市中区中央にあるカフェ。 □LiLi (りり) 東京都渋谷区神宮前にある美容サロン。 □LES LESTON(れすれすとん) 日本発祥のシャツブランド。 □ロットロット ファミリーコンピューターのゲームソフト。 □ロミロミ ハワイに伝わる伝統的リラクゼーションマッサージ。 【わ】 □焼肉日和「和和」(わわ) 岡山県岡山市大安寺南町にある焼肉店。 □わいわいがやがや 茨城県ひたちなか市勝田中央にある居酒屋。

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「益永みつ枝」という基準

「F.O.B COOP」が終わる?! 生活雑貨提案ショップ「F.O.B COOP」が閉店する。 会社近くの相模大野店のカフェをよく妻と利用していた。ミルクレープと珈琲、いやその他のどれもが美味しく、店長の松尾さんはじめスタッフの方の接客も行き届いていて、伊勢丹で買い物をした後など、キッチンに一番近い隅の席を選んでよく座った。取材で使うノートは「F.O.B COOP」のだったし、あのデュラレックスのグラスをはじめ会社にも自宅にもこの店の商品が多い。閉店はインターネットで知って驚いたが、最も利用していた相模大野店が全国で最後に残ったショップと知り、以前にも増して行くようになった。 私はこの店でオーナーである益永みつ枝さんの著書「VIVA!LIVE! よくぞ女に生まれけり」を知り、購入した。そして、益永みつ枝という極めて魅力的な女性の存在を知ったのだ。 よくぞ女に生まれけり 第三章の書き出し、「パリ。サンジェルマン・デ・プレの交差点に立っていた。」という一節から立ち上る、心地よい高ぶりが好きだ。 デュラレックスのグラスからフランスという国に興味をもった益永さんが、初めてのフランスの地で文化と遭遇しながら、「日本で売りたい」モノを仕入れる過程の孤軍奮闘には勇気づけられる。「F.O.B COOP」という“文化発信拠点”づくりのために、「非常識」「わからない」と言われながらも自らのセンスで選んだ商品を仕入れ、「融通がきかないくせに自信がある。なんでも会議にかけないと決まらない。統計と、売れた金額でしか判断をしない」日本の会社や、行政、市民たちとの軋轢と出会いを通じ、好きなもののために基盤づくりに突き進む益永さんの足跡は、百年戦争当時のフランスのヒロインとして有名なジャンヌ・ダルクと形容をしたくなるほど、エネルギッシュで、とにかくカッコいい。 益永みつ枝との出会い その「F.O.B COOP」の青山店の店頭で益永みつ枝さんと会話を交わしたことがある。益永さんはずっと、レジには立つし料理も作る“オーナー”だった。そこで私が、著書に心を動かされた話をすると、出版社との間で文章のトーンで意見が合わなかった話を、さながら著書の一節を読み聞かせるかのように、単なる一人の客に過ぎない私に気さくにしてくださった。しかし、益永さんは実はお店のお客様の誰にでも同じように接する。相模大野店でも、よく来店客と会話していた、と聞いた。そんなフラットでオープンな性格も好きだ。また、だからこそ生まれた「F.O.B COOP」文化なのだと思う。 インターネットのインタビューなどを見ると、益永さんの脳裏にはきっと次の構想がある、と想像するのだが、いずれにしても「F.O.B COOP」の閉店によって、小売りの一つの基準が失われた、という思いがある。「『無印良品』ができ、最近では『ユニクロ』もあるが、それらはモードではなくただの衣料だと思う」という著書のなかの一節も、本当にそうだと納得する。 益永さんが実現する次のステージが見たいのはもちろん、次こそ何らかのお仕事で改めて出会えたら、と願ってもいる。 そのとき私は、益永みつ枝という基準の奥底にふれることができるのだ。

  • コピーライティング

「未来」は非現実な「ミライ」へと変わる

現在の日本は、国家自体の未来が不透明だと言って差し支えない状況だ。その根底には、破たんすら想定のなかに含まれる国家財政の危機的状態がある。それが年金、医療、介護という、国民の未来にとって最も重要なテーマ全てにわたる不安につながっているのだ。そして、労働という人間に欠かせないもう一つのテーマも、継続的な就労を阻害される労働者派遣法の改正によって、さらに霧が深くなった。 「ミライ」は現代の意識を物語る 私は最近、いずれも学校法人の2つのキャッチフレーズを目にした。一つは、筑波学院大学の「ススメミライヘ」、もう一つは、啓明学園高校の「チカラをプラス。ミライヘ、プラス。」だ。 恐らく、数年前までは学びの場所を表現するコピーにおいて、圧倒的に「未来」が選ばれていたはずだ。「未来」は「ミライ」より情緒的で、将来ある学生たちの夢をかなえる場としてよりふさわしい表現であったと思う。 私は前述のこの二つのキャッチフレーズから、そうしたまさに可能性あふれるイメージの「未来」ではなく、無機質でより曖昧な印象のある「ミライ」を選ばざるを得ないコピーライターの心理を想像する。 内閣府の「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によれば、「あなたは、自分の将来について明るい希望を持っていますか。」という問いに対し「希望がある/どちらかといえば希望がある」と答えた割合は、日本が61.6%で、アメリカ(91.1%)、スウェーデン(90.8%)、さらに韓国(86.4%)、フランス(83.3%)、ドイツ(82.4%)と比較してもかなりの格差で日本が最も低くなっている。その理由の一つには冒頭に掲げた日本を取り巻く暗澹とした空気があろう。しかし理由はともかく、若者たちのそうした意識に覆われた現代は、「未来」という言葉が決してポジティブに迎えられるとは言えない状況にあると推察して間違いではないだろう。 夢や希望や可能性とは別の「ミライ」 全く同じ文脈で語れるのが、吉高由里子をメインキャラクターにした三井住友銀行 「いくぞ、ミライ。」だ。投資信託という人生の未来と関わる商品に採用された「ミライ」という言葉。もちろん、そこには明るく活動的なキャラクターイメージの影響もあろうが、前述の2つのキャッチフレーズと共通するある構造も見られる。 それは、これまで夢や希望や可能性と近い存在にあった「未来」という言葉を安易に使いづらい現代日本の状況と、それを図らずも裏付けた内閣府調査でのネガティブな若者たちの意識を前に、「ミライ」というある種SF的な印象すら含むカタカナを選ばざるを得ない構造だ。 最早、高校生や大学生、あるいは一般庶民の人生の向こうにある「未来」には、かつての明るいイメージを絡ませづらい。だから、コピーライターは「ミライ」を用いて具体的に訪れる現実の日々の意味合いを薄め、夢や可能性を薄めた非現実的な表現に逃げざるを得ない。そんな時代の構造を感じる。 そして「ミライ」は増え続ける もちろん「ミライ」は、一方で技術革新のイメージをプラスした、ある種の勢いをもった言葉である。しかし、そうした実生活と離れたイメージが、進路に悩み、資格や学びに取り組む学生や、将来の家族設計に腐心する大人たちの心理にフィットするとは思えない。 トヨタ自動車の量産FCV「MIRAI(ミライ)」や、京都を中心に活動する4人組アイドルユニット「ミライスカート」、さらに言えば将来性ある若手アスリートを取り上げるフジテレビの「ミライ☆モンスター」という番組名がある。これらはいずれも“具体的な人生の未来を語らない”という点で先の3つのキャッチフレーズとは異なり、だからこそ「ある種の勢い」が効果を高めると言ってよい。 「ミライ」には、漢字よりカタカナの方が一見新しい(前述の『SF的な印象』も含む)、という言葉のもつイメージの優位性もある。しかし私は、上記と同様の理由で、人生の向こうにある現実的で具体的な「未来」を語る広告に、「漢字よりカタカナの方が一見新しい」というだけの理由で「ミライ」を肯定するのにも疑問を覚える。 ただ、もし今後、勢いや新しさだけを狙って具体的な「未来」を語る広告に「ミライ」が使われるとしたら、その使用量は倍々で増える、と予測できよう。その点で、「未来」と「ミライ」の行く末が興味深い。 「未来」で届く、広告をつくりたい。

  • ビデオパッケージ撮影・制作

許されるべきでないCMの平板読み

日本語を無視してはびこる「平板読み」  平板読みの不快さについては、当社WEBサイトのコラム「日本でまだ誰も言っていないコト」に思いの丈を綴ったが、一向に改善の兆候が見られないテレビ各局のアナウンサーたちの無節操な“平板読み病”に腹立たしさと強い疑問を感じる。 この「平板読み」とは、語頭にアクセントを置くべき単語を一本調子で読み、単に文字を音声に変えているだけの読み方を指し、意味内容を無視した読み方だ。つまり表意文字である漢字の意味は、単なる音の羅列に変えられてしまうのである。 最近、アナウンサーが原稿を読む際、文章全体を単に音声に変えるだけの一本調子で読んだ後、慌てて言い直すシーンも頻繁に見かける。例えば「住民が入居する」は「住民」の「じ」と「入居」の「に」にアクセントが置かれるべきだが、昨今の局アナは「ジュウミンガニュウキョスル」と、一文を単なる音の羅列として一本調子で読むのだ。 私が当社WEBサイトのコラムで取り上げたのは、あくまでテレビを通じて発信される平板読みで、その多くはニュースなど生放送におけるアナウンサーの事例だった(しかし事前にチェックできるはずのナレーターの語りにもほぼ100%平板読みが見られる。言葉のプロとしての自覚があるのだろうか)。 無策のうえに無視され続けるCMの発音  そこで、テレビCMである。言うまでもなくこの分野で発信される言葉あるいは発音、言葉の醸し出す雰囲気は広告主のイメージを左右するものである。当然のことながら事前チェックは慎重に行われるはずだが、以下に示す事例の通り、信じられぬ水準の平板読みが放置されている。 テレビやラジオのCMの発音には、例えば方言の活用や舌足らずの女性タレントの言葉など、発音自体が商品やサービスのイメージと連動した重要な要素になっている場合もあろう。つまり発音そのものに演出の狙いがあるケースだ。しかし、下記の平板読み事例には、そうした戦略的な意味は皆無である。表現上の特別な狙いやCM効果と殆んど関係のない領域でなぜ日本語を蔑ろにするのか、私には理解できない。少なくともCM業界の方々の、日本語の発音に対する悲しいほどの鈍感さを証明する事例として見るしかないのだ。 【CMの平板読み事例】   〔表記の見方〕 ()内が本来の単語だが、平板読みによって()前の単語として聞こえる例を表す。つまり、タカラトミーの事例では「己の(勘)」と伝えるべきを実際は「己の缶」と伝えていることになる。 ※タカラトミーのみラジオCM。 〔2015年〕 ○「己の缶(勘)と運のみ」タカラトミー(黒ひげ危機一発) ○「新しくなった雉(生地)を。」大日本除虫菊 ○「夏の課(蚊)にはキンチョール。」大日本除虫菊 ※1つのラジオCMで「課」と「蚊」を両方使用。 ○「創業130年を声(超え)。」TISSOT 〔2014年〕 ○「ACジャパンは、この活動を紫煙(支援)しています。」ACジャパン 〔2013年〕 ○「僕らを厚く(熱く)する」コナミ 〔2012年〕 ○「汗や菱(皮脂)に強く」 ドクターシーラボ「BBパーフェクトクリーム エンリッチソフト」 〔2011年〕 ○「冷たい水も出る。厚い(熱い)お湯も出る。」 宅配水/クリクラ 〔2010年〕 ○「麦のうまさだ!」 アサヒビール/クリアアサヒ ※「う」にアクセントを置いていない。 ○「厚い(熱い)ものは冷ましてから」 オリックス生命/がん保険 〔2009年〕 ○「いい笑顔はいい葉(歯)から」 ロッテ ○「菱(皮脂)を落として」 花王 ○「お客さまの試算(資産)を」 外為ドットコム ○「進化を棘 (遂げ)た模様です」 OBC/奉行シリーズ 私には残念ながらCM制作に従事する知人がいないので、現場の考え方を知る術がないが、上記の事例はいずれも看過できない日本語の誤りだ。 特に「いい笑顔はいい葉から」は単純過ぎるが故に致命的だ。仮に方言に配慮するとしても、日本人全体で物を噛む「歯」を「葉」と発音する割合がいったい何%あるというのか。96年にヒットした歯磨き粉のCMに「芸能人は歯が命」という有名なフレーズがあったが、決して「葉が命」なんて発音はしなかった。 昨今のテレビCM制作者の怠慢、あるいはとてつもない鈍感さを感じる。

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