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強く、短く、劇的な「タグライン」=記憶に刻まれるブランドメッセージ

【広報戦略TIPSシリーズ】 広報クリエイティブの視点から考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現 <第6回>強く、短く、劇的な「タグライン」=記憶に刻まれるブランドメッセージ「タグライン」とは何か?企業広告及び企業広報の世界で、かつて「スローガン」と呼ばれていたものが、近年「タグライン」という言い方に取って代わられるようになっています。では、「タグライン」とは何でしょうか?「スローガン」の新しい言い方なのでしょうか?「キャッチフレーズ」とはどう違うのでしょうか?実は、「スローガン」も「タグライン」も「キャッチフレーズ(ヘッドライン)」も、アメリカの広告界では古くからある用語です。日本では、一般に「スローガン」とは企業理念やコーポレートアイデンティティー(社会的存在価値)を広く社会に向け発信する企業メッセージとして理解されてきましたが、当のアメリカでは当初、単発の広告キャンペーンの「ヘッドライン(キャッチフレーズ)」を「スローガン」と呼んでおり、その後、日本での定義のような長期的なコーポレートメッセージも含めるようになったという経緯があります。一方、「タグライン」に関して言えば、日本ではごく近年登場した感がありますが、アメリカでは「スローガン」と同じく古くから用いられており、それには、企業名であれ、商品・サービス名であれ、その「ブランド」を強く人々の記憶に刻む、というはっきりした目的がありました。従って、「タグライン」は常に「ブランド」とセットにして用いられるものであり、短く、覚えやすく、その直後にそのブランド名を必ず想起させるという効果を伴ったものであると理解されています。この点を考えれば、「ブランド」の「キャッチフレーズ」とも言えなくはない訳ですが、「キャッチフレーズ」が一般的にはポスターやCMなどの単発の広告のキャッチコピーとして理解されていること、また「スローガン」と言うとどこか社会運動の標語のような響きもあることから、新たに近年「タグライン」という言い方が企業広報及びブランディング上の重要な使命を担った用語として台頭してきたと言えます。しかし、そういうことであれば、「タグライン」とはやはり「スローガン」の新しい言い方に過ぎないということになるのでしょうか?理知的かつ、ドラマティック。それが心に残る「タグライン」。元々のアメリカでの定義や使われ方は置いておくとして、この日本の広告・広報界及び産業界においては、「スローガン」とは、企業として目指す方向性とか、その企業がもたらす素晴らしい未来像とか、あるいは翻ってその企業が既に獲得している揺るぎない社会的ポジション、といったものを短い覚えやすい表現で表したフレーズ、というのが一般的な認識と言えるでしょう。これに対し、「タグライン」には、どこかもっとエモーショナルな、あるいはドラマティックな響きが伴います。勿体ぶった公式の顔に対して、本音と本気を潜ませたパーソナルな言葉としてのリアリティがあるのです。言い換えると、「スローガン」が建前的な企業の理想像とすれば、「タグライン」は特定のブランド(企業名を含む)の本質的価値を短く言い切ったが由に心に届く強さがあります。それ故に、もはや「スローガン」ではなく「タグライン」という表現が、SNSを通じてホンネの言葉が行き交うこの時代に日本の企業広報の世界にも徐々に浸透して来た、と言うことができるでしょう。そうした秀逸な「タグライン」の例を挙げると、やはりその多くは「タグライン」の本家本元であるアメリカの企業ブランド(アメリカ発のマーケティングキャンペーンを含む)に行き着きます。・ “A Diamond is Forever.” De Beers  (日本では「ダイアモンドは永遠の輝き。」として展開。一企業のタグラインであることを超え、ダイアモンドそのものの市場価値を永久至上に高めた究極のタグライン) since 1948・ ”Think Small.” Volkswagen  (ドイツの国民的小型車ビートルを大型至上主義のアメリカのクルマ社会に投入した当時無名の広告代理店DDBの伝説的アンチ広告キャンペーン)1959-1970・ ”Impossible is Nothing.” Adidas  (鮮烈かつ強烈な印象を残したアディダスのトップギア宣言)2004・  “JUST DO IT.” NIKE  (ナイキを世界的ブランドに押し上げた史上最も成功したタグライン) since 1988・ 「一瞬も 一生も 美しく」資生堂  (1872年の創業以来133年の歴史を経て誕生した唯一無二のタグライン) since 2005・「水と生きる」SUNTORY  (祖業のウイスキー事業から直近の健康食品までを網羅する、哲学的ですらありつつ企業としての本質と矜持を言い切った普遍的タグライン)since 2005人の使命感と、企業の本気。心に届く「タグライン」の誕生。「タグライン」が果たすべき役割は、人の記憶と心にブランドの声を届け刻み込むことです。しかし、言葉がリアリティから乖離すれば単なる大仰な夢想となり、かと言って何もドラマがなければ面白味のない無粋な挨拶で終わります。従って「タグライン」として成功裡に着地できるのは、リアリティとドラマ性を同時に高い次元で満たす言葉。それは、そのブランドが言うからこそ信頼できる事実であると共に、そのブランドが言うからこそ共に共有できる夢、と言うことができるでしょう。「いのちを想い、いのちを守る。」 ー冒頭のWebサイト画像のトップページに大きく現れたこのタグラインは、クライアント企業の開発、生産、そして営業、また広報の最前線の現場で働く多くの社員にインタビューし、さらに数日に渡って生産現場を取材・撮影した末に、最終的に提案し決定した一案。それまでに、幾つかの案が検討され却下されていた中で、この案はほぼ「即決」に近い形でクライアントに受け入れられました。同社は、戦前の帝国大学時代に大学発ベンチャーとして誕生。80年以上に亘り日本のワクチン開発・製造のリーディングカンパニーであり続け、数々の世界初のワクチンの開発と供給を担って来た事実上の製薬企業であると共に、同時に同大学内の研究機関との協働により国策としてのワクチン開発・製造のフロントラインに立ってきた極めて公益性の高い財団法人であるという、特殊な存在。この年、民間の大手製薬企業との合弁による子会社の設立によって、企業グループとして新たな出発をするに当たり、弊社がその広報戦略と新聞広告、Webサイト、映像、その他の広報ツールの企画・制作一式を担当しました。このタグラインは、これらの広報ツール全般に一貫して用いる表現としても開発されましたが、自らが生産するワクチンが、自分自身の家族も含む世界中の多くの人々の命を守ることに直接関わっているという強い意識と使命感を持つ現場の社員共通の思いと、新たなグループとしての出発を契機によりグローバルな事業戦略を展開していこうとする企業の本気とが、かけがえのない「いのち」という重要なキーワードによる対句表現の中に込められ、劇的な余韻を残す、心に届く「タグライン」として誕生した案件です。

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「オリジナル」デザインの確立=デザインによるブランディング成功への導線

【広報戦略TIPSシリーズ】 広報クリエイティブの視点から考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現 <第5回>「オリジナル」デザインの確立=デザインによるブランディング成功への導線 「オリジナル」なものだけが、生き残る。 知的生産活動、中でも人間の創造性への比重が高い種類の分野、たとえば、映像、写真、音楽、文章、絵画、デザイン、あるいはWebプログラミング、コンピュータサイエンス、そしてVR、AR等の領域において、「オリジナル」であることは、その活動の果実(=アウトプット)が成功するための非常に重要な条件です。なぜそう言えるのでしょうか? 理由は3つあります。 まず1つ目は、「オリジナル」でないものは人の目に留まらないから。 次に2つ目は、「オリジナル」でないものは人に感動を覚えさせないから。 最後に3つ目は、「オリジナル」なものだけが生き残るから、です。 「オリジナル」とは、「独自」という意味ではない。 このように書くと、何だか身も蓋もないように聞こえるかもしれませんが、しかし事実、クリエイティブの成功or失敗は、単に情熱を傾ければ何とかなるという種類のものではありません。それだけ「オリジナル」であることは重要なのです。 しかし、この「オリジナル」という言葉ほどにその意味を履き違えられているものはありません。どういうことでしょうか? 端的に言えば、「オリジナル」とは「独自」という意味ではないということです。 もう少し説明を加えると、確かに「オリジナリティー」という言葉は「独創性」を意味するものの、それは決して「Strange」(=変な)とか、「Peculiar」(=変わっている)を意味しない。寧ろそれよりも「根源的な」、「原型の」と言ったニュアンスが強い。そもそも「Original」の語根は、「起源」を意味する「Origin」です。 従って単に奇抜なものや、新奇なものが「オリジナル」ではありません。実際、そういうものは一時的に面白がられてもクリエイティブとして生き残りません。 さらにこれがブランディングとなると、その企業や商品の方向性を誤ったものに導いてしまいます。 では、「オリジナル」の真の意味は何でしょうか? それは、まさに「Creative」(=創造的)なものであり、そして「Genuine」なもの、つまり「本物」であるということです。 実際、「オリジナル」という言葉を「本物」に置き換えると、冒頭で述べた3つの理由はすべて得心できます。 クリエイティブは、「本物」でなければ人の目には留まらず、「本物」でなければ人を感動させることができず、「本物」でなければ生き残ることができません。 「オリジナル」なデザインは、ブランディングを成功に導く。 「オリジナル」なものは「根源的」であるからと言って、決して型にはまったもの、退屈なものではありません。寧ろその真逆です。 「オリジナル」なものは美しく、オーセンティックであり、シンプルであると同時に奥深い。そして、常に新鮮です。iPhoneやiPadのデザインを例に取れば、「オリジナル」の真の意味は明白です。 それはまたブランディングを正しい方向性へ、成功へと導きます。Appleのブランディングは、iPhone、iPad誕生によって今の成功へと至ったのは誰もが認める周知の事実。 「オリジナル」なクリエイティブ、特にグラフィックデザインにおけるそれは、デザインがブランディングを正しい方向と成功へと導く好例です。冒頭のビジュアルもその一つ。 大手マンションデベロッパー発行の広報誌のリニューアル創刊案件で、それまでの情報誌的な編集方針を改め、企業としてのブランディング強化を意識し、コンテンツとデザインのクオリティと高い統合性を持つ広報誌スタイルへと一新することを提案。 時期を同じくして発売された、オーナーによるセミオーダーメードのリビング設計が可能な高付加価値マンションシリーズ紹介への導線として、デベロッパーのメインの展開エリアである中四国、関西の高付加価値のオーダーメード製品を日本の「本物」のモノづくりを共通の切り口に紹介。 グラフィックの基本コードとして、エディトリアルの美しさ、端正さ、そしてビジュアル配置の面白さと新鮮さを追求し、カラーリングも白地をバックに黒、赤、紺、黄色をポイント配置。かつキャッチフレーズのスタイル、コピーのトーン、フォントと写真間のスペーシングに至るまで周到に計算して調整。あらゆる点でクオリティと統合性を追求しました。 結果、広報誌デザインが企業イメージ、マンションのクオリティ性を象徴する「オリジナル」なものとして機能。「オリジナル」デザインが、ブランディング成功への導線の役割を果たした典型的な案件となりました。

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「マインド」のフォーマット化=成功する広報ブランディングの基礎要件

【広報戦略TIPSシリーズ】 広報クリエイティブの視点から考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現 <第4回>「マインド」のフォーマット化=成功する広報ブランディングの基礎要件 「コンセプト」を共有していても、着地点が同じとは限らない。 広告であるか、広報であるかを問わず、クリエイティブという目に見えない種類の作業工程(=頭の中の思考+想像+創造の回路)を経て、着地点(=表現物というアウトプット)に至らせる仕事にとって、一つの案件に携わる制作メンバーが同じ方向を向いているべきことは、まさにマスト要件です。 そこで必ず登場する言葉が「コンセプト」なるもの。いわく、「この広告のコンセプトはクルマの未来です」とか、「このデザインは物事の始まりをコンセプトにしています」とか。 では、その案件に携わるメンバーが「クルマの未来」とか「物事の始まり」といったコンセプトを共有してさえいれば、みんな同じ着地点へと導かれるかと言えば、当然そんなことはありません。 人間のクリエイティブシンキング(Creative Thinking)は、個々の人間が自動的に同じアウトプットを導き出す程コンビュータライズされてはおらず、またそんな一面的なつまらないものでもありません。だからこそクリエイティブは面白いのであり、一方で方向性が定まらないと手に負えないものでもある訳です。 では、どうしたらいいのでしょうか? 「マインド」を掘り起こし、共有する。そして、アウトプットを統一する。 ここまでの話を読んで、「あ、わかった。要するにトンマナのことが言いたいんでしょ?」と思った人は、正解に近いですが、しかし完全に正解ではありません。そして、この完全に正解ではない、というところにこそ問題があるのです。どういうことでしょうか? 「トンマナ」(=トーン&マナー)とは、コピーライティング、デザイン、写真という、クリエイティブの表現物を構成する主な要素の雰囲気、人間で言えば、顔立ち、表情、声、話し方、話題、ファッション、歩き方、好み、などによって醸し出されているその人の個性、ということになります。一言で言えばどんな個性の、どんな雰囲気のアウトプットとなるのかを決める表現上のコード、それが「トンマナ」です。 では「コンセプト」を共有し、「トンマナ」で調整すると、素晴らしいアウトプットが出来上がるのか?と言えば、「らしい」もの(=よく見かけるもの)は出来上がるが、「オリジナル」なもの(=ホンモノ)は出来ない、が答になります。よく言われる「似たような広告」とか、「ああ、そうなんですか」的反応を引き出す広報物しか生まれてきません。実に残念な話です。制作メンバー一同、一生懸命やっているというのに。。 この原因は一体どこにあるのか?原因は、「コンセプト」と「トンマナ」の間にあるべきもの=「マインド」が欠けているためです。 「マインド」とは何でしょうか?それは、企業がその広告や広報物を通して伝えたいオリジナルな「思い」です。その「思い」は、その企業独自の「来し方行く末」から紡ぎ出されたものであればあるほど、リアリティがあり、また共感やリスペクトを呼ぶものです。製品の開発ストーリー、サービス改善努力中の発見、といったところに「思い」は隠れています。 「コンセプト」は意外に簡単に見つかります。「トンマナ」もプロフェッショナルなら熟知しています。しかし、「マインド」は掘り起こさなければなりません。まさに宝探しのようなものですが、一旦、宝の原石が見つかったら、磨けば磨くほど輝きます。 まとめると、「コンセプト」という目的に沿って、「マインド」を掘り起こして共有し、「トンマナ」によってオリジナルなアウトプットが出来上がるように、コピー、デザイン、ビジュアルを統一化する。これが、完全なる正解です。 「マインド」のフォーマット化が、広報ブランディングを成功させる。 「マインド」のオリジナルなフォーマット化(コピー、デザイン、ビジュアルの統一化)を行った結果、広報ブランディングとしても成功した冒頭のビジュアルの一例を紹介します。 制作物は、国内の電炉業界の最大手の一角を占めるクライアントのベトナム現地合弁会社20周年記念誌。現地工場やメコンデルタ、ホーチミン市内での取材・インタビュー・撮影を含む全84ページの大型案件で、何より「マインド」の掘り起こしが最重要であることは案件着手時から明らかでした。 制作チームでは、ベトナム戦争終結間もない頃に遡る現地での技術指導、社会主義政府との粘り強い交渉を経ての設立、多数のベトナム人社員の雇用と目覚ましい業績により、ベトナム経済と鉄鋼業界の発展に大きく貢献してきた歴史、それを可能にして来たこの企業独自のチャレンジスピリットと共存共栄の思想に着目。 結果、「メコンを興せ!~VENTURE UPON THE MEKONG~」というタイトルに「マインド」のすべてを集約し、現地での取材・撮影、そして編集段階でのコピー、デザイン、ビジュアルを通じ、一貫してこの企業のダイナミックで熱い歴史と現地ベトナムの発展の鼓動を再現することに努めました。そして得たアウトプットは、隅々にまで「マインド」の行き渡ったまさにオリジナルなもの。 案件着手時に膨大な情報量とスケールに圧倒される程だったものが、「マインド」の掘り起こしとフォーマット化により一つの強いベクトルに収斂され、わずか3か月余りの制作期間において理想的なアウトプットとして完成した極めて印象深い事例です。

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逆転的キーワードの発見=広報表現の「コロンブスの卵」

【広報戦略TIPSシリーズ】 広報クリエイティブの視点から考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現 <第3回>逆転的キーワードの発見=広報表現の「コロンブスの卵」 マイナス要素をはらむ広報課題には、「事実」+「視点」が不可欠。 世界の3大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭の公式セレクションに「ある視点」という部門があります。最近では日本からも黒沢清監督の「トウキョウソナタ」(審査員賞受賞)、河瀨直美監督の「あん」(オープニング作品)、そして今年のジブリ作品の「レッドタートル ある島の物語」(特別賞受賞)が出品され話題となりました。 パルム・ドール(最高賞)を争うコンペティション部門とは別に並行して競われ、あらゆる種類のビジョンやスタイルを持つ「独自で特異な」作品群が多く世界から出品されますが、特徴として実際の「事実」を物語のベースとしつつ、それを「ある視点」から描くことで「事実」の持つ別の「価値」を際立たせている作品が多くみられます。たとえば、河瀨直美監督の「あん」もその一つと言えるでしょう。(作品未見の方は是非DVDでご鑑賞ください!) 実はこの「事実」+「視点」という、現実の情報に対するアプローチの一手法が広報課題の解決においても有効である、というのが今回のTIPSです。特にその広報の素材に何らかのマイナス要素が関係する場合は、この手法こそがその素材が持つ別の「価値」を逆転的に際立たせてくれるものとなります。どのようにでしょうか? 敷地中央に樹齢三百年の枝垂れ桜が立つ開発プロジェクトの広報 課題となった広報案件は、ある大手マンションデベロッパーが松江で取り組んでいたマンション開発プロジェクトでした。 敷地はかつての松江藩の家老屋敷跡地という、立地的にもステイタス的にも高級マンションプロジェクトにうってつけのものながら、一つ大きな問題がありました。敷地中央に樹齢三百年の枝垂れ桜が立っていたことです。 敷地の形状と桜の位置から建設上切り倒しは必須で、売主もそれを承知で売却したものの見事なその桜は地元民にこよなく愛されており、建設反対の声が上がる懸念もあって、結果プロジェクト遂行は暗礁に乗り上げるかに見えました。そこで最終的にプロジェクト責任者であるデベロッパーの松江支店長が決断したのは、難しいと言われる桜の敷地内移植です。 しかし桜は「生き物」と言われ、成功の可能性は未知数。特にこれだけの樹齢の巨大な枝垂れ桜の移植を行える植樹医を探すのも難航しましたが、この件が地元新聞で取り上げられるとデベロッパー側の姿勢が評価され、むしろ支援の輪が広がり、松江市も協力。ベテランの植樹医も見つかり、移植はその年の冬に決行されました。 広報案件としてこの話が舞い込んで来たのはこの時点です。弊社が長年担当してきた同社広報誌次号のメインコンテンツ候補にと。一見、広報素材としては企業努力が評価された理想的な情報のようでもありました。 しかし、同時に課題も見えていました。確かに切り倒さず移植するという難しい企業努力を払ったものの、それはやはり飽くまでこの敷地でのマンション建設を遂行するためであり、その報告の記事が読み手に自画自賛と映ることのない展開とするにはどうしたらいいか、ということです。 しかも、移植した桜が春に花開くかはこの段階ではまだわからない状態でした。 「借景」の発見。記事に社会性を生んだ「コロンブスの卵」的逆転の視点。 課題の解決は、ある「視点」の発見によってもたらされました。その「視点」とは「借景(しゃっけい)」です。 「借景」とは、目の前に広がる近景、中景、遠景が構成する遠近感の美を、視覚上の、言わば心の眼のフレームに落とし込み「一幅の絵画」として楽しむ風景の鑑賞技法のこと。「借景」の美は、まさに案件所在地の松江市の隣町・島根県安来市にあって、隅々まで完璧に設えられた見事な日本庭園により13年連続で米誌「Journal of Japanese Gardening」のランキングで世界一に選ばれている足立美術館の創設者・足立全康(あだちぜんこう)氏が推奨し、生涯を通じて追い求めたものでした。 名門藩の家老の屋敷内に立ち3世紀に渡り人々の目を楽しませて来た枝垂れ桜。それは春の季節、家老屋敷の壮麗な瓦屋根と板塀に大きな枝振りを投げかけて咲き誇り、遠く近くから眺める人々にとって見事な「借景」の美を映じていたに違いありません。 確かにその桜を移植すること自体は、企業の開発プロジェクトがなければ必要なかったことかもしれません。しかし既に屋敷はなく、今や放置された跡地にただ桜がぽつんと立つのみであったこの場所が、周囲の閑静な環境に溶け込む低層の高級マンションと美しく整備された植栽の敷地が広がる居住区として再生し、その中に全体の景色に穏やかな調和をもたらす桜の大樹が立つ風景は、まさに新たな「借景」の誕生でした。 この広報コンセプトが記事にもたらしたものは、社会性です。これにより足立美術館にも取材に全面協力して頂くことができ、また松江市都市景観課の担当者インタビューもスムーズに運びました。 さらに嬉しいことに、リアルタイムで追いかけていた移植後の桜が広報誌入稿直前の三月末に開花。再び松江に飛んだカメラマンにより撮影された、柔らかなピンクの三分咲きが枝全体に広がった枝垂れ桜の全景写真を特集巻末に掲載することができました。 記事は読者の大きな反響を呼びましたが、読者の共感を獲得することに成功した広報クリエイティブの手法は、「事実」の持つ別の価値に焦点を当てリフレーミングしてくれた「借景」というコロンブスの卵的「視点」だったと言えます。 ●制作事例 http://www.onthedesk.jp/works/bulletin/1013/

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ツイン効果=「サプライズ」+「好感度」2乗の法則

【広報戦略TIPSシリーズ】 広報クリエイティブの視点で考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現 <第2回>「ツイン効果=「サプライズ」+「好感度」2乗の法則」 古典的アテンション理論「3Bの法則」は今でも真実 広告表現上の古典的黄金ルールとして、1950年代のアメリカ広告界で生まれたと言われる「3Bの法則」。Bで始まる3つのもの-Beauty(美女)、Baby(子供)、Beast(動物)-のいずれかをビジュアルに使用すればまず間違いなく人の関心を引く、というものですが、この理論は半世紀以上を経ても今だ尚真実と言えます。実際、TVCM、雑誌広告、Webバナー、その他あらゆる表現メディアに、この3つのBのどれかが何らかの手法で登場しない日はありません。 この法則が時代を経ても通用するのは、それが単なる一過性の広告技術ではなく、人間の基本的な心理原則―美しいものや可愛らしいものまた面白いものに惹かれるーに根ざしているからです。 とは言え、社会は常に進化しています。情報過多の現代、単にベーシックな広告手法だけで必ず望む成果を得られるほど時代も人も単純ではありません。 広報クリエイティブに必須の要素は「サプライズ」と「好感度」 広告は目立てば勝ち、のような考え方もあります。それも全くの間違いではありませんが、実際は、目立たなければ負け、ということであり、注意を引いた上で見る人を説得の戸口にまで連れて来れるか、というところが広告のコンバージョン目標です。このために広告のクリエイティブは常にビジュアルとコピーにしのぎを削っています。では、広報のクリエイティブはこの点どうなのでしょうか? 広報はこのシリーズの第1回で考えたように、エンゲージメント(つながり、婚約)を当面の目的としています。企業が信頼感や好感度を獲得するためのPR全般が広報です。従って、広告のようなアグレッシブさよりも、品のいい「サプライズ」感がポイントになります。それによって企業が得るものは「好感度」という果実です。では、どんなビジュアル手法が効果的なのでしょうか? ツインの効果は、「サプライズ」+「好感度」の2乗化! 有効な表現手法の一つに「ツイン効果」があります。何でも「2個一」で見せることで新鮮な「サプライズ」感を生む方法です。冒頭のビジュアルはその一例。 沖縄のリゾートマンションのエリアプロモーション展開時に、Webスペシャルコンテンツと情報誌の表紙ビジュアルで地元沖縄民謡の女性デュオとタイアップ。美しい沖縄の民族衣装とハイビスカスの髪飾りを華やかにまといにっこり微笑む二人のツイン効果は想像以上で、プロモーション対象の首都圏・関西圏の富裕層からの「サプライズ」+「好感度」を獲得して、コンバージョンの問合せ数値は大きく伸長しました。 古典的な「3Bの法則」に「ツイン効果」をプラスし、地元色のチューニングを施して成功したPR案件と言えます。

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イケテル広報誌の表紙=最強最良のBtoB広告

【広報戦略TIPSシリーズ】 広報クリエイティブの視点で考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現 <第1回>「イケテル広報誌の表紙=最強最良のBtoB広告」 今、企業広報の時代 「広告が効かなくなった」と言われて久しくなります。理由は何でしょう? 「ネットのせいだ」「SNSのせいだ」「人と時代が変わったからだ」・・・。すべて正解です。 では、広告が効かない今、企業は自社の製品やサービスをどう売り込めばいいのでしょうか? その答は、「売り込まない」です。売り込むことなく、信頼と共感を得て、その結果として製品やサービスを選択して頂くこと、さらには企業そのもののファンになって頂くこと。マーケティング用語で「婚約」や「つながり」を意味する「エンゲージメント」という考え方に基づく関係性が、企業と生活者、また企業と企業の間の関係性を表わす時代となりました。 「婚約」した二人は、結婚の前に互いをより良く、またより正しく知ろうとします。そこには、基本的に嘘が介在してはなりません。企業のマーケティングの基本戦略が、従来の「広告」から「広報」へとシフトした今、企業には製品やサービス、また企業そのもののファクトを生活者にいかにより良く、またより正しく知って頂くかが求められています。 インパクトのある広報誌の表紙は強い 企業広報の中核に位置するツールは大きく分けて2つあります。1つはWebサイト、そしてもう1つが広報誌です。 特に広報誌は、情報による企業のファクトを伝えるだけでなく、企業の持つ考え方、目ざす方向性、製品やサービスの開発におけるストーリーやエピソード、また共有したい思いなどのエモーショナルな部分、つまり一言で言えば企業マインドを効果的なクリエイティブで表現し訴求することのできる非常に雄弁なツールです。 中でも表紙は、広報戦略における最も重要なクリエイティブの主戦場です。大胆なビジュアルや刺さるキャッチによって、言わば「一発で」読者のアテンションを引く広報誌の表紙は非常に強い訴求力とブランディング力を持っています。 カタイ企業イメージを逆手にとる最強最良のBtoB広告 とりわけ顧客が個人のコンシューマーや生活者ではない企業間取引の場合、広告は往々にして企業の信頼感やソリューションの優越性、あるいはコストパフォーマンスといったあたりを直接的に訴求するものになってしまいがちですが、広報誌というツールを使えば、もっと様々なアプローチが可能になります。 たとえば、機械や建設などの文字通りカタイイメージの企業の場合、一つのクリエイティブ手法として、製品のアップを照明やストロボなどを駆使してドラマチックに撮影した写真をメインビジュアルに採用し、そこに新製品の完成や初出荷をストーリー立てるキャッチフレーズを重ねることでカタイ企業イメージを逆手にとったハードロマンな世界を表現することができます。 さらに、表紙上に誌面内で展開される主要記事のタイトルを併載することで、企業活動の種々のファクトも同時に示せます。ビジュアルとコピーのカップリングが成功すれば、最良の広報クリエイティブの誕生です。 イケテル広報誌の表紙は、最強最良のBtoB広告としても機能するのです。

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